テクニカル・リセッションにはすぐには入らない
2024年8月29日に発表された4~6月期のGDP改定値は、速報値の2.8%増から3.0%増に上方修正されています。
アメリカのGDPはまず速報値が発表され、その後改定値、確定値の発表と続きます。
次回の4~6月期確定値は9月26日に公表予定ですが、よほどのことがない限りマイナス成長へ修正される可能性はかなり少ないでしょう。
注目すべきは、10月30日に発表される7~9月期の速報値ですが、もしこの数値がマイナスとなった場合でも、まだテクニカル・リセッションに入るわけではありません。
先行指標からヒントを探る
国内総生産(GDP)は経済の状態を示す非常に重要かつ正確な指標ですが、膨大なデータを扱うため発表までに時間がかかり、確定までに修正が続くこともしばしばです。そこで、早い段階で景気の動向を把握するためには、先行指標に注目することが重要です。
その中でも「アンケートデータ」は発表までのタイムラグが少なく、先行性が高いといえます。代表的な先行指標としては、ISM製造業景気指数、PMI(購買担当者景気指数)、そして雇用統計があり、これらのデータは景気の変動を早期に捉えるための有力な情報源といえるでしょう。
ISM製造業景気指数は、製造業の景況感を測る重要な指標です。400社以上の企業の購買担当者へのアンケート調査をもとに算出され、毎月の第1営業日に発表されるため、他の経済指標に先駆けて景気の動向を掴む手掛かりとなります。
この指数は、新規受注、生産、雇用、納期遅延、在庫の5つの要素から構成され、50を上回ると経済が拡大していることを示し、50を下回ると経済が縮小していることを示します。
2024年は9回の発表がありましたが、拡大圏である50を超えたのは3月分だけです。製造業は景気の「川上」に位置する産業であり、その点からもさらに先行性の高い指標として注目されていますが、2024年は縮小圏がかなり続いているのです。
また、特に最近このISM製造業景気指数が市場の注目を集めています。というのも、8月と9月の株価下落の引き金となったのは、この指標の悪化が大きな要因とされているためです。