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セブン&アイへの買収提案の動向「今後はカナダ大手が“同意なき買収”に踏み切るかが焦点」と専門家 日本企業の「防衛策」に必要なものとは

「経済産業省は2023年8月に『企業買収における行動指針』をまとめ、日本企業には経営陣からの事前同意がないものでも、“真摯な買収提案”と認められる提案に対しては真摯な検討が求められるようになりました。金融庁の要請で日本企業同士の株の持ち合い解消が進み、円安傾向も続いたことなども海外からの買収に追い風となっている。今後も海外の事業会社や企業買収を生業とするファンドによる買収提案が続々と出てくるのは間違いない。セブン&アイのほかにも、日本を象徴するような企業に買収提案がなされ、それが成立する可能性もあるでしょう」

伊藤忠の“コングロマリット・プレミアム”は最大の買収防衛策

 そうした流れに、日本企業はどう立ち向かえば良いのか。

「まずはM&Aなどを通じて、買収されないくらい企業規模を大きくすることです。ただし総合電機メーカーや総合化学メーカーのように、“総合”と名のつく数多くの事業を抱えている企業は、企業そのものの価値が、事業ごとの企業価値の合計よりも小さくなる“コングロマリット・ディスカウント”状態になっていることが多い。そうすると、アクティビストや買収ファンドにより解体される可能性がある。一緒になっているからこその価値を示し“コングロマリット(複合企業)・プレミアム”を発揮することで、買収できない価格をつけることが最大の買収防衛策となります。

 たとえば伊藤忠商事は、繊維やエネルギーから、ファミリーマート、さらにはビッグモーターなど事業範囲は多岐にわたり、“総合”商社の名の通り典型的なコングロマリットといえます。しかしながら、伊藤忠に対してコングロマリット・ディスカウント解消の議論を杓子定規に当てはめ、解体することがベストな行動かというと、必ずしもそうとは言えないと思います。

 伊藤忠には国内の優秀な人材を集める力があり、数々のビジネスを手がけてきたノウハウが蓄積されており、それらのリソースを新たな事業展開に活かすエコシステムも有しています。こうした価値創造力は伊藤忠をバラバラに解体すると失われてしまう可能性が高く、そのことが最大の買収防衛策になっているといえます。そうした状況を作り出すうえでは、企業価値を最大限に向上させられる真の“経営のプロ”が必要です」

 海外からの買収提案が急増する時代の到来を前に、日本企業にはこれまで以上に企業価値を高める努力が求められているようだ。

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