中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

「えっ?結婚式のご祝儀に新一万円札はNG?」“失礼クリエイター”が作り出す無駄なマナーが量産される社会

渋沢栄一もこんなマナーが生まれることは予想していなかっただろう(時事通信フォト)

渋沢栄一もこんなマナーが生まれることは予想していなかっただろう(時事通信フォト)

「傷つく人がいるかもしれないから配慮しなければ」

 私は2001年まで会社員でしたが、当時はここまでめんどくさいビジネスマナーはそんなになかったように思います。いつしか「マナー講師」や「失礼バスター」みたいな人々が出てきて勝手によく分からないマナーを作り続けて今に至ります。

 今回の新一万円札の件ですが、この風潮が進むとどんどんおかしなことになるんですよね。あり得る未来を考えます。

【1】戦国武将や江戸時代の将軍を題材とした小説を書くのはご法度。なぜなら彼らは妾を持っていたから

【2】昭和の時代のコンプラ無視のお笑い芸人はテレビ局から出入り禁止

【3】会議では、両サイドの発言時間を50:50にしなければならない

【4】大笑いをして手を叩く行為はその場で「あまり面白くないな」と思う人へのハラスメントなので、手を叩く行為は禁止。小笑い程度に留めよ

【5】肌の色が白いことを「美白」と呼ぶが、色が白くない人が「私は『美』ではない」と傷つくし、人種問題にも配慮しなければならないから、「美白」という言葉は禁止。よって、積極的に日焼け防止をすることも禁止

 そんな極端なこと……と思うかもしれませんが、これって本当にあり得る未来なんですよ。とにかく「傷つく人がいるかもしれないから配慮をしなくちゃ……」ということから、何でもかんでも規制をしようとする。これが何をもたらすかといえば、自由な発想を阻め、発言することを委縮させる社会の到来です。そもそも、全ての人に清廉潔白を求める社会を「ホワイト社会」と呼称すること自体、いろんな問題を孕んでいると思いますが、本当に行き過ぎて欲しくないですね。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『よくも言ってくれたよな』(新潮新書)。

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