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河合雅司「人口減少ニッポンの活路」

就職氷河期世代の5人に2人は「年金が月10万円未満」に… 「働かなければ食べていけない」これからの高齢者就業のあり方

新たな公的支援は困難…能力・意欲に応じた仕事ができる社会を

「年金の足し」とか「健康維持のため」として週に何時間か働くといった従来の高齢就業者のイメージ通りの働き方をする人がいる一方で、「現役時代」さながらにバリバリと働く人も珍しくなくなるという多様さが今後の高齢社会の姿となるだろう。

 政府の高齢者雇用に関する改革は、その地ならしなのである。少子高齢化を伴いながら進む人口減少によって、税収も減っていくことが避けられない。財源確保が困難になる中で、“豊かとは言い難い高齢者”や“貧しい高齢者”が増えたとしても、新たな制度を作ってそのすべてに公的支援することは難しい。「多くの国民には働けるうちは働いてもらい、可能なかぎり自ら高齢期の生活費を稼いでほしい」という政府の本音が透けて見えてくる。

 だが、高齢者の就業機会を単に拡大するだけでは、政府の思惑通りには運ばない。日本企業は年功序列の賃金モデルが多く、再雇用者の人件費を抑制するところが一般的だ。そのために定年後の人を補助的業務に回すというケースが少なくない。高齢となると健康面での個人差が大きくなるという現実もある。

 こうした状況下で、高齢者を戦略としてとらえ、構造的な人手不足の解消策の1つにしたいという企業側の思惑と、「老後期の生活費を稼ぎ続けなければならない」という高齢就業者側の懐事情の両立を図るには、「高齢者が選べる仕事の大半は補助的業務」という現状を変えることから始めなければならない。そして、何歳であろうとも個々の能力や意欲に応じた仕事を選べるよう、「豊富な選択肢のある社会」の実現まで一気に持っていくことである。

 これは、高齢者の就業に限った課題ではない。年齢や性別などによる区別をなくし、適材適所で人材を戦力化することは、人手不足が深刻化する日本においてますます重要となる。

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【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。最新刊『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、「今後100年で日本人人口が8割減少する」という“不都合な現実”を指摘した上で、人口減少を前提とした社会への作り替えを提言している。

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