日本の住宅業界には「新築を買ったそばから建物価値が落ち、住んだ瞬間に3割減、10年で半値、20~25年程度でほぼゼロ」といった定説があったが、少なくとも中古マンション市場ではすでにこうした方程式が崩れつつあるという。いったい何が起こっているのか。不動産コンサルタント・長嶋修氏の新刊『グレートリセット後の世界をどう生きるか』(小学館新書)から、変わりつつある日本の不動産事情にについて解説する。
進む街のコンパクト化で新築住宅は「高嶺の花」に
現在、全国1741自治体のうち、747自治体(2024年3月31日時点)が街のコンパクト化を進める「立地適正化計画」に取り組んでいます。ただ、中には本気で取り組んでいるとは到底思えない、補助金目当てのいい加減な自治体政策も多く、したがって多くの住民に危機感も共有されていないようです。
しかし、このような状況は全く持続可能ではありませんので、いつかどこかで本格的に取り組む必要があります。都市計画というのは息の長い取り組みですから、本来は長期的な計画を立ててじっくり取り組むべきところ、何もしてこなかったツケを一気に払うといったことになるかと思います。
1968年に都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に分類し、市街化を促進する地域と抑制する地域とに分けましたが、それをもう一度行うイメージです。現在の市街化区域を、人口減少社会に合わせてさらに小さく区切るのです。
こうなると、市街化を抑制する地域に分類された地域では、現在市街化調整区域で住宅ローンを利用できないのと同様に、住宅ローンが使えなくなるでしょう。そうなると不動産価格は大暴落です。上下水道や道路・橋などのインフラ修繕をはじめとする行政サービスは後回しにするか打ち切られるでしょう。「必要ならば中心部に集まってください」というわけです。
新築住宅は早晩「高嶺の花」となります。その兆候がすでに新築マンション市場に現れているのを私たちは目撃しているわけですが、時間の経過とともに一戸建て市場にも波及するはずです。
「家を買うといえば中古住宅があたり前」といった、他の先進国と同様の常識に日本も遅ればせながら変わるわけです。そもそもアメリカでは、日本で言う中古住宅のことを「Existing House」つまり「既存住宅」と呼びます。日本においても中古住宅という呼び方はやめた方がいいかもしれませんね。んー、かといって、既存住宅という呼び方も何かカタい感じがしますね。何か適切な呼称が見つかるといいのですが。