景気を回復させるには不動産市場の回復が不可欠
具体的には、マクロ経済政策として“超長期特別国債や特定プロジェクト向け地方債を発行し、積極財政政策を強化すること、預金準備率、利下げなどの金融緩和政策を進めること”が示されている。
不動産不況対策としては“市場の悪化を止めて回復させ、商品不動産建設を厳しくコントロールする中で増やし、在庫を最適化し、物件の質を高め、ホワイトリストプロジェクト(当局が定めた基準に合致する優良案件)への貸出を増やし、不動産、土地の在庫整理を支援する。群衆の要望に応え、住宅購入制限政策を調整し、既存の借入者を対象とした住宅ローン金利の引き下げを実施し、土地、財政・税制、金融政策を最適化し、不動産発展に関する新たなモデルの構築を推進する”としている。
資本市場改革としては“資本市場を奮い起こすよう努力し、中長期資金が資本市場に流入するよう強力に誘導し、社会保障、保険、資産運用商品などの資金が市場に流入する妨げとなっている部分を取り除かなければならない。上場企業の合併、企業リストラを支援し、公募ファンド改革を着実に推し進め、中小投資家を保護するための政策措置について研究し、打ち出さなければならない”と強調している。
現在の不景気は不動産バブルに対する需給両面からの強力な政策が、2021年夏あたりを境にして効きすぎてしまったことが原因だと分析されている。景気を回復させるためには不動産市場の回復が不可欠だが、だからと言って結果を焦って各種規制を緩め過ぎてしまえば再びバブルが再拡大してしまう。
もっとも、不動産の前に2015年以来となる株バブルの再来となりかねない状況だ。前回の本土株バブルは金融緩和に端を発した投機の拡大を当局が防ぎきれなかったこと、それを抑え込もうと違法な資金流入を一網打尽に取り締まったことが原因だ。
欧米機関投資家は今回、足元の政策強化をポジティブに捉え、中国株を買ってきているようだが、歴史的には“飛び乗り飛び降り”が成功している。短期的には合理的な投資スタンスだと考える。ただ、中国市場において長期的には常にシステムの不安定性が付きまとう。共産党はこれを克服できるかどうか、注意深くウォッチしておくことが、今後の中国経済、中国株式市場を見通す上で重要だ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。