しかし、この公募制学校推薦型入試も、実際には志願者の多くが首都圏の高校生だ。
理由のひとつには、推薦入試対策の塾が増えていることが挙げられるだろう。オンライン指導をする塾や地方に校舎がある塾も存在するが、ナガセグループの早稲田塾の活気ある対策授業などを見学すると、やはり都内の生徒が有利であることは分かる。
このように推薦入試でも地方の受験生を呼び込むのが難しい現状があるなか、他の大学はどうしているのだろうか。
早稲田は「昔は地方の学生が多かった」は事実ではない
SNSなどで「早稲田はかつては地方出身者が多かったが、今は東京の中高一貫校の生徒がほとんどだ」という説も流れているが、実はこれは事実とは異なる。
1950年の段階で学生の6割は関東出身で、大きくその割合が変化しているわけではないという。すくなくとも戦後に限るならば、早稲田は今も昔も首都圏出身者が多い大学なのだ。一方で地方の学生を増やすために工夫もしており、大阪や佐賀に系列校を設置したり、オープンキャンパスは仙台、大阪、広島、福岡などの地方都市でも開催したりしている。
その一環で、総合型選抜では、地方の高校生にターゲットを定めた入試をしている。
たとえば、社会科学部の全国自己推薦入試は、日本全国を7つの地域ブロックに分け、ブロック単位で合格者を出す方式とし、各ブロック5名程度の合格者を出すことにしている。ただ、この入試は“めざましい活動実績”が求められる。例として挙げられるのは、サッカー全国大会優勝、将棋全国大会優勝といった類のものだ。そのため、普通の高校生からするとちょっと手が届かない印象だが、ほかにも、地方の高校生をターゲットにした入試を開始している。
今回は大都市圏と地方に教育格差がある中で、難関大はどう地方の高校生を入学させようとしているのかを、入試の面で取材をし、上智大学と早稲田大学の例を紹介した。次回は早稲田大学の取り組みを引き続き紹介する。
【プロフィール】
杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ)/ノンフィクションライター。2005年から取材と執筆活動を開始。『女子校力』(PHP新書)がロングセラーに。『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)も話題に。『中学受験ナビ』(マイナビ)、『ダイヤモンド教育ラボ』(ダイヤモンド社)で連載をし、『週刊東洋経済』『週刊ダイヤモンド』で記事を書いている。【Xアカウント】@sugiyu170