学力試験以外の要素も評価し入学者を選抜する、総合型選抜が多くの大学で取り入れられている。この新たな制度の拡大で、受験はどのように変わったか。難化する一般受験と比べ、総合型選抜では地方の学生にもメリットがあるといわれる。『中学受験 やってはいけない塾選び』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする「推薦入試の現在地」。【全4回の第1回】
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今年の5月、東京大学の五月祭で行われた総合型選抜を考えるシンポジウムで、山形県立山形東高等学校の佐々木隆行教諭が登壇した。
県立山形東は2018年に探究科を開設し、東大の学校推薦型選抜(学校長の推薦を得て出願する推薦入試)で2021年に3名合格、その後も毎年合格者を出しつづけている。
佐々木教諭はシシンポジウムでこう語った。
「県下一の進学校である山形東の進学実績が落ちてきました。特に東大の理系の合格者はもう出ないんじゃないかという危機感もありました。山形県のトップの難関校であることを宿命づけられているからには、それは許されないので、様々な試行錯誤をし、その一環として県の方針で探究科設置を機に改革をすすめることになりました」
共通テストが知識だけではなく、思考力を求める内容であることも探究科設置を促した。全校体制で探究型学習を導入した結果、推薦入試で東大や東北大などの国立大学へ進学する生徒が増えていった。2021年度には東大の学校推薦型選抜(推薦入試)で3人の合格者が出て、全国から注目された。
「一般選抜対策では幼い頃から受験対策をしている首都圏の受験生たちと勝負することの難しさはあります。しかし、推薦入試では主要5教科以外の総合的な学力や経験値も要素も評価の対象になります。山形東の生徒は、都会の高校生とは違う経験値があります。たとえば、限界集落で起きていることを実体験として知っていたり、積雪量の多さの不便さを身に染みて体験しています。そういった経験が新たな発想を産み、それを活かせる入試だと思っています」(佐々木教諭)