金融所得の多い富裕層に有利な税制から生じる「1億円の壁」
ところが累進課税では、所得が上がるほど増額されるはずの税金が、じつは所得が1億円を超えたところから減少する傾向があり、「1億円の壁」と呼ばれることもあります。壁ができる原因は、事業所得や給与所得の場合は、累進課税で所得が多いほど税率が高くなりますが、金融所得課税は一律のため起こる現象です。つまり、年間の所得が1億円を超える人の場合、金融所得の割合が高い傾向にあり、それによって所得税の負担率が低下しているというわけです。
金融所得の多い富裕層に有利な税制のままでいると、経済的な格差の拡大につながりかねないということで、この金融所得への課税を強化しようというのが石破氏の考えです。
2025年から富裕層向けの課税策が実施
じつはすでに2025年から、富裕層に対する課税強化策「ミニマムタックス」が実施されることが決まっています。合計所得金額から特別控除額である3.3億円を引いた金額に、税率22.5%を掛けた金額が、通常の所得税額を超えた場合、その差額分を申告納税しなければなりません。
計算式では、【(合計所得金額-3.3億円)×22.5%-通常の所得税額=追加納税額】となります。
ミニマムタックスは、年間合計所得が30億円以上、金融所得などのみの場合は10億円以上の人が対象なので、全体の0.03%程度とごく少数ですが、今後、対象者が拡大される可能性は否めません。
石破氏が自民党総裁になった初日に、株価が大きく下落する「石破ショック」が起こりました。これはまさにマーケットから「ノー!」をつきつけた形になります。これを無視して、強行突破をすることはさすがにないと思いますが、今後の動向は気にしておいたほうがよさそうです。
ちなみにNISA口座内の売買は、金融所得課税の対象ではありませんのでご安心ください。