大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

カナダ企業から買収提案を受けたセブン&アイが取るべき対応策は? 大前研一氏が「買収提案は渡りに船」と考える理由

セブン&アイはどう対応すればよいか(イラスト/井川泰年)

セブン&アイはどう対応すればよいか(イラスト/井川泰年)

 セブン&アイ・ホールディングスがカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールからの買収提案を拒否したが、今後は「同意なき買収」に発展する可能性もある。経営面から考えてセブン&アイは、どのように対応するのがよいのか。経営コンサルタントの大前研一氏が、「もし私がセブン&アイ社長だったらどうするか」をシミュレーションする。

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 本連載では、私が学長を務めている「ビジネス・ブレークスルー(BBT)大学」の「RTOCS(Real Time Online Case Study)」という授業を何度か紹介した。「もし自分が○○だったら」と仮定し、社長などリーダーの立場から今後の具体的な打ち手を1週間で考えるケーススタディだ。今回も「もし私がセブン&アイのトップだったらどうするか?」を考えてみたい。

 初手は「逆買収」の提案だ。クシュタールの時価総額は約710億カナダ・ドル(約7兆5000億円)で、セブン&アイの約5兆6000億円を大きく上回っている(10月1日時点)。

 だが、クシュタールの“実力”は高く見積もってもせいぜい4兆円ほどである。セブン&アイが逆買収を仕掛ければ、資金調達は銀行やファンドから簡単にできるだろうし、クシュタールの株主も歓迎すると思う。

 ただし、今後クシュタール側から提案される買収価格が7兆円を超えたら即売却する。なぜか?

 セブン&アイは、すでに本連載で指摘したように、社内が伊藤派(創業者の故・伊藤雅俊名誉会長派)と鈴木派(セブン-イレブン・ジャパンを国内トップのコンビニに育て上げた鈴木敏文名誉顧問派)に分かれて対立している。このため、井阪隆一社長をはじめとする経営陣は内紛に明け暮れて祖業の「イトーヨーカ堂」を大量閉店せざるを得なくなり、傘下の百貨店「そごう・西武」も立て直せずに売却して経営力のなさを露呈した。

 さらに、ITシステムの構築でも内紛が原因で多数の新旧ベンダーが入り乱れ、混乱状態に陥った。結果、ECサイト「オムニ7」や決済サービスが頓挫し、DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略も失敗に終わった。

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