たとえば大都市圏の鉄道では、AIを活用した輸送の効率化が検討されています。駅にある自動改札機で、各利用者の入場・出場した駅や時間、移動経路などの情報を収集し、それをAIで解析できれば、従来得られなかった利用状況に関する詳細な情報が得られ、列車の運行に反映できます。
また、近年は、車両にカメラを搭載する試みも行われています。カメラを使って前方の様子や、レールやまくらぎ、架線などの設備をカメラで撮影し、得られた映像をAIで解析できれば、異状(通常とは異なる状態)がある位置を特定でき、メンテナンスを担う作業員の負担が減ります。
これらが実現すれば、鉄道を支える業務が効率化されます。だから鉄道でのAI活用が検討されているのです。
世界のトレンドになったAIの活用
鉄道におけるAIの活用は、すでに世界のトレンドとなっています。今年9月にドイツのベルリンで開催された「イノトランス(InnoTrans=国際鉄道技術専門見本市)」では、「AIモビリティラボ」と呼ばれる展示が初めて設けられ、AIの活用に関する講演やパネルディスカッションが行われました。
つまり、世界の鉄道業界では、AIが鉄道にイノベーションをもたらすツールとなると認知されたのです。
いっぽう、日本の鉄道業界も、この流れに乗ってAIの活用に取り組んでいます。たとえばJR東日本は、山手線を走る一部電車にレールや架線を撮影するカメラを搭載しています。
公益財団法人鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)も、この流れに乗り、研究開発を進めています。鉄道総研は、本年10月に東京都内で「鉄道総研講演会」を開催しました。タイトルは「鉄道の持続的発展を目指して―省人化と自動運転―」で、省人化の例として、AIを活用してメンテナンスにかかる人員を削減する技術や取り組みを発表しました。