石破氏の経済音痴ぶりはすでに発揮されている。能登半島の豪雨被害対策への補正予算の編成について、「補正予算だと時間がかかるから予備費で対応する」と否定したのだ。しかし実際は真逆で、予備費だと予算執行に手間と時間がかかり、補正予算なら国会さえ開催されればすぐに組める。一度補正を組んで予算枠を確保すれば後は迅速な災害対応が可能になるのに、それすら分からない。
部分連合を組む国民民主党の玉木雄一郎代表が石破政権の引き締め政策を転換できるとは思わない。何しろ彼は元大蔵官僚だ。党としては「消費税5%」を掲げるが、財務省がそれを飲まないことは誰よりも分かっているだろう。所得税優遇に関する「年収103万円の壁」を緩和するための控除額引き上げを飲ませるのが精一杯で、今後財務省の反撃を受けて減税規模は大幅圧縮になるはずだ。
有能な経済ブレーンを抱えていない石破政権は、ザイム真理教というカルトの元で、令和恐慌へとひた走ろうとしている。
【プロフィール】
森永卓郎(もりなが・たくろう)/1957年7月12日生まれ。東京都出身。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。日本専売公社、経済企画庁、UFJ総合研究所などを経て現職。近著に『身辺整理』(興陽館)『投資依存症』『書いてはいけない』(ともに三五館シンシャ)など。テレビやラジオのコメンテーターとしても活躍中。
※週刊ポスト2024年11月22日号