森永卓郎「読んではいけない」

森永卓郎氏が看破する「103万円の壁」論争の構図 「恩恵が大きいのは消費税5%の引き下げ」「ザイム真理教と戦える野党がいないことが情けない」

「103万円の壁」引き上げをめぐり様々な思惑が交錯(玉木雄一郎氏/時事通信フォト)

「103万円の壁」引き上げをめぐり様々な思惑が交錯(玉木雄一郎氏/時事通信フォト)

 闘う経済アナリスト・森永卓郎氏の連載「読んではいけない」。今回取り上げるのは、国民民主党が掲げる「103万円の壁」引き上げ案について。もし実現すれば約7兆円の税収減が見込まれるというが、そうした悲観論は“財務省のプロパガンダ”と断罪する。いま財務省との間で何が起きているのか、森永氏が解説する。

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 先の衆院選で自民党が大敗し、結果的に野党である立憲民主党と国民民主党の議席増に繋がった。ただし、立憲民主の比例得票数はさほど増えていない。減税策を打ち出さなかったからだ。

 目下注目されているのは、国民民主党の掲げる所得控除に関する「103万円の壁」の引き上げ案だろう。過半数割れした石破茂政権は国民民主党と政策ごとの部分連合を組むほかないため、この案は飲むことになるはずだ。

 だが本来、国民民主党が持ち出す交渉カードは別にあった。選挙時に掲げていたもうひとつの公約、「デフレが続く限り消費税を5%に下げる」の政策である。国民の受ける恩恵はこちらの方が明らかに大きい。

 なぜこの政策を前面に出せなかったのか。それは、玉木雄一郎代表が元大蔵官僚だからだろう。消費税の減税は財務省が絶対に飲まないことがわかっている。ゆえに「103万円の壁」の引き上げという取りやすい案に傾いたのだと私は見ている。

 無論、この「103万円の壁」を巡っても、財務省の反対は苛烈である。178万円への引き上げは多くのサラリーマンに恩恵があり、比較的所得の高くない人でも年間10万円ほどの減税になる。しかし、この引き上げが実現すると、結果的に地方税を含めて年間7兆円以上税収が減る。財務省は大手メディアを通じて、「国民民主党の政策で恒久的に税収減となり、日本の財政を逼迫させる」と活発に“布教活動”を行なっている。

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