大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

【出生数70万人割れは確実】深刻な日本の人口問題、大前研一氏は「高度人材の受け入れ」を提言 世界のどこでも生きていくための“台湾化”がカギに

ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める大前研一氏

ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める大前研一氏

“台湾化”は希望につながる

 高度人材について、私が注目しているのは台湾だ。合計特殊出生率は0.87(2022年)で、日本、韓国、中国と同様に少子化が進み労働者不足になっている。だが、その一方で台湾人は世界で活躍している。

 代表例は、米半導体大手エヌビディアのジェンスン・フアンCEO(最高経営責任者)、世界最大の半導体受託製造企業TSMC(台湾積体電路製造)の創業者モリス・チャン氏、世界最大手の電子機器受託生産企業・鴻海精密工業の創業者テリー・ゴウ氏である。

 なぜ台湾人は優秀なのか? 「明日はこの国がなくなるかもしれない」「明日の我が身はどうなるかわからない」という危機感があり、世界のどこでも生きていけるように、世界共通のスキルである英語とITを集中的に勉強するからだ。

 対照的なのが日本である。いま日本の大学でトップクラスの学生は、多くが中国人留学生だという。だが、彼らの大半は、高評価のアメリカやイギリス、オーストラリアなどの有名大学に行けなかった(母国では)二戦級の人材である。その人たちに負けている日本人学生は情けない限りだが、英語もITも苦手だから世界に出て行くことはできない。

 だから、ぬるま湯の閉鎖的な国内で、30年も上がっていない低賃金に甘んじるしかないのであり、言い換えれば、世界で通用しない人間を量産しているから、国力が衰え続けているのだ。

 そういう中で、実は日本でも、富裕層を中心にインターナショナルスクールや国際的に通用する大学入学資格IB(国際バカロレア資格)が人気を集めている。もともとそれらの学校は、日本に来た外国人駐在員たちが子供を通わせるケースが多かったが、今は日本人の親たちが、世界に通用する教育を求めて、あえて学費の高いそうした学校を選択している。

 これらは、ある意味で世界のどこでも生きていくため=“台湾化”というべき動きである。日本人の間でも旧態依然とした文部科学省の学習指導要領に対する危機感が強まっているわけで、この“台湾化”が将来に希望を持てるカギとなっているのだ。少子化を乗り越えるためのヒントはここにある。

【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点2024~2025』(プレジデント社)など著書多数。

※週刊ポスト2024年11月29日号

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