業界全体が抱える問題
難病や末期がんの患者に入居者を限定し、介護や看護がいつでも受けられるサービスを提供する施設は“ホスピス型住宅”と呼ばれる。国が「病院から在宅へ」を進めるなかで、PDハウスを含め、近年は需要が拡大してきた。複数社のホスピス型住宅で訪問看護に携わってきた看護師A氏が言う。
「PDハウスの件がどうなるかには強い関心がある。というのも、大手で人的資源も豊富な同社のやっていることがダメという話になれば、もっとマズいところがたくさんある。この形態の施設自体が立ちゆかなくなる心配さえあります。
『1日3回』『1回30分』の基準があるが、以前勤めていた施設では、現場の看護師の間で“何時から何時まで訪問する”といった時間を区切った計画があるという感覚すらなかった。担当の看護師は各患者の日々の様子などを訪問看護報告書に書き込み、定期的に主治医の先生に提出しなくてはならないのですが、その施設では訪問した看護師とは別のスタッフがまとめて書いていました」
今年に入って、PDハウス以外の中小のホスピス型住宅にも、訪問看護の過剰請求疑惑が報じられた。別の施設に勤める看護師B氏はこう話す。
「計画書は1日3回の訪問で作っていても実際は2回しか訪問しないケースがあると思うし、複数人で訪問の計画でも看護師同士の予定が合わずに1人で行ったこともある」
ただ、B氏は「末期患者や難病の方をケアする性質上、仕方ない側面もある」と続けた。
「特に末期の方は日々何が起きるかわかりません。1日3回どころか、4回も5回も訪問することもざらにある。一応、1日3回と決めておいて、実際には随時対応で3回以上訪問することもあるし、比較的安定していて、2回訪問の日もある。
訪問にかかる時間も同様。在宅で過ごす人への訪問看護で30分以内になることはまずないが、施設内だと夜間に患者が眠っていて状況が安定していれば、時間がかからないこともある。それらをひっくるめて30分訪問を1日3回と報告している面がある」
一連の報道では施設の部屋ごとに、売り上げ目標を掲げるといった利益優先の事業者の存在も報じられているが、各社の事情は様々にも見える。