所有者が亡くなった後も、名義を変えないままだった土地の固定資産税は誰が払うべきなのか──。それは遺産分割があったかどうかで変わってくるという。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【質問】
父が30年前に亡くなって以降、兄が登記を変えないまま、父名義の土地の固定資産税を払っていました。
兄が亡くなり、兄嫁から「相続してほしい」と言われたので私の名義に変更したところ、兄が払っていた30年分の固定資産税を兄嫁から請求されました。納得いかないのですが、私は支払う義務があるのでしょうか。(東京都・71才女性・パート)
【回答】
お父さんが亡くなった後、遺産である土地についてお兄さんが登記を変えなかったのは、次のどちらの理由だったのでしょうか。それによって回答は変わります。
【1】そもそもお兄さんは、お父さんの相続を遺産分割しなかった
【2】遺産分割協議をしてお兄さんが土地を相続したのに、その相続登記をしなかった
【1】の場合は、未分割のまま30年が経過し、お兄さんが亡くなったので、お父さんの相続人であるあなたと、お兄さんの相続人(兄嫁や甥姪など)がお父さんの遺産を共同で相続していることになります。その状態の下、遺産分割としてあなたがこのたび土地を取得したことになります。
相続開始後から遺産分割までの間に土地にかかった固定資産税は、土地を維持する経費で、遺産管理費用といわれます。遺産管理費用は相続財産に関する費用として、遺産の中から支弁するとされていますが、限定承認などの特別な場合以外はお金の出しようがないので、相続債務に準じるものとして、法定相続分に応じて負担されると考えられます。また、遺産分割前であれば共同相続人は法定相続分の持分で共有している関係であり、共有物の管理費用として、持分割合である法定相続分で負担するともいえます。