5年に一度の年金改正で今回の目玉は「在職老齢年金」の見直しだ。働きながら年金を受給する人は、給料と年金の合計が一定額を超えると年金がカットされる仕組みだが、その基準が大幅に緩和される。それにより、「何歳から年金を受け取るべきか」の答えも大きく変わる──。【年金改正で知るべき「繰り上げ」「繰り下げ」タイミング・第1回】
これまで給料や年金が多い層には繰り下げのメリットが小さかった
今回の年金制度の改正は、年金を「受け取る時期」の選択を改めて考える好機と言える。
毎年送られる「ねんきん定期便」には、65歳で受給開始した場合の基本受給額が記載されているが、年金受給開始のタイミングは「60~65歳」「66~75歳」の間の1か月単位で自由に選べる。何歳で受け取り始めるかの判断次第で、毎月の年金額は大きく変わるのだ。
65歳より前に受け取る「繰り上げ」を選ぶと、早く受け取れる代わりに毎月の年金額は減額される(1か月あたり0.4%減)。5年繰り上げで60歳受給開始を選ぶと、基本額より24%減だ。逆に、受給開始を遅らせる「繰り下げ」を選べば年金額は割り増しに(1か月あたり0.7%)。70歳からなら毎月の年金は42%増、75歳なら84%増になる。
別掲の表は、厚労省のモデル年金(月額16万2483円)をもとに、受け取り始める年齢ごとの年金月額をまとめたものだ。
どの時期にどのくらいの額を受給したいかのライフプランに合わせて、「得する受け取り方」を選ぶことが重要になる。
今回の年金改正により、働きながら年金を受給する人の「繰り下げ」「繰り上げ」の選び方のポイントが変わってくる。年金博士こと社会保険労務士の北村庄吾氏が指摘する。
「働きながら受け取る在職老齢年金には、給料と年金の合計額が一定額を超えると年金(報酬比例部分)が一部支給停止されるルールがあります。ただし、『年金カットされるくらいなら、受給開始を遅らせよう』と考えて繰り下げを選択しても、支給停止されるはずだった分の年金は割り増しの対象にならない。だから給料や年金が多い層には繰り下げのメリットが小さかった。
しかし、今回の年金改正で在職老齢年金のルールが見直され、支給カットになる基準額が引き上げられる方向です。繰り下げを選んだ時に割り増しのメリットをフルに受けられる層が増えることになります」