北村さんは「在職老齢年金の改正は、一部の裕福で元気な高齢者にしか関係がない」と語る。
「65才以上で在職老齢年金の対象になるほど稼いでいるのは、ごく一部の経営者や役員、専門職など、限られた人たち。一般的な収入を得ている人にとっては、メリットもデメリットもありません」
とはいえ、上限が引き上げられることで、高齢者が努力して稼いだ分は“稼ぎすぎ”として年金を取り上げつつ、“まだ稼げますよ”とばかりに、よりハードに働かせる向きになっているのは事実だ。
「年金改正は飴と鞭がつきものですが、鞭はほとんどの人にとって苦痛になるのに対し、飴を享受できる人はごくわずか。聞こえのいいことは一部の人にしか該当しないので、残念ながら、ほとんどの人にとって年金改正は常に改悪なのです」
一方で、働く高齢者への年金支給が増えることで年金財政がひっ迫するのも事実。厚生労働省の試算によれば、62万円に引き上げられた場合は1600億円、71万円なら2900億円もの財源が新たに必要になる。
「この財源をどう確保するかはいまだ詰めきれておらず、将来の年金受給額が下がる可能性もある。働き手を確保したいという目先の利益に走った短絡的な改正です」
有利なのは、高所得な高齢者だけ。在職老齢年金が引き上げられるからと無理に働き続けるのではなく、もらえる年金で豊かな老後をどう過ごすかを考える方がよさそうだ。
※女性セブン2025年1月16・23日号