大学入試に「女子枠」を設置するケースが急速に増えている。理工系をはじめとした女性比率が低い学部での男女比率のアンバランスの解消を目的とするもので、2023年度入試まで女子枠を設置している大学は11大学19学部だったのに対し、2024年度は34大学58学部に増加している。2025年度には、新たに15大学16学部で女子枠が導入見込みだという。
女子枠を設置する大学が増えた背景には国の施策の後押しもあるが、当の女性たちは、「入試における女子枠だけを増やしても仕方ない」と冷静だ。特に女性比率が低いとされる理工系学部への進学について、“悩んだことがある”という女性たちに話を聞いた。
学部に女性が増えたら雰囲気は変わるのか
Aさん(神奈川県/20代)は、工学部に行った姉の姿を見て、自身は別の学部に進学を決めたという。
「2つ年上の姉が地元の大学の工学部に進学しました。姉を見ていると、工学部は、大学生活で“損”をする気がしたんです」
なぜ、大学生活が“損”になるのか。これは個人の考え方に大きく関わる部分だが、Aさんは「大学ではそこそこ遊びたかったから」だと本音を明かす。
「姉は、入学当初はメイクもおしゃれも頑張って通っていたみたいですが、夏休みが明けてからはほぼすっぴん、普段着に変わっていきました。聞くと『おしゃれをしても見せる相手がいないし、必修も多くて化粧や服装にこだわっている時間はない』とのこと。理系はどこも忙しいとは聞きますが、姉は『工学部はもはや“男子大学”だし、女子扱いされない』と言っていたので、それは嫌だなと思って、工学部は選択肢に入りませんでした」(Aさん)
Aさんの姉が指摘するように“女性が少ない”ことが進学回避の理由なら、女子枠により女性比率が上がれば選択肢に入るはず。Aさんは「何年か経って雰囲気が変われば積極的に進学を考える女性も増えるのでは」と分析する。
実際に若干ではあるものの、現在工学部に進学する女性は増加傾向にある。文部科学省「学校基本調査」によると、2024年の工学部進学者数は1万7022人と前年比0.9%増加。大学側も女性の快適さアップのために積極的で、東京科学大学(旧東工大・東京医科歯科大)では一部の女子トイレで生理用品を提供、女性専用のリフレッシュスペースを新設するなど、女性が居心地のよい空間づくりに注力。今後の学内雰囲気の変化が注視される。