闘う経済アナリスト・森永卓郎氏の連載「読んではいけない」。今回は「政府・日銀の金融政策」について。森永氏は日本経済衰退の大きな要因は、労働生産性の低さなどではなく、「政府と日銀の財政・金融政策の失敗にある」と指摘する。
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惨憺たる数字だと言わざるを得ない。
内閣府が昨年12月23日に発表した国民経済計算の年次推計(2023年)によると、日本の1人あたり名目国内総生産(GDP)は3万3849ドルだった。韓国に抜かれ、経済協力開発機構(OECD)加盟国中22位に後退した。韓国と日本の1人あたり名目GDPが逆転するのは比較可能な1980年以降で初めてのことだ。
主要7カ国(G7)ではイタリアの3万9003ドルを下回り最下位となった。2022年の3万4112ドルから250ドル以上減少し、G7のなかでマイナス成長となったのは日本だけである。
日本経済がマイナス成長となった理由について、エコノミストなど専門家と称する人たちのほとんどは、少子高齢化による人口減、円安、労働生産性の低さを挙げている。だが、その分析は本質を突いていない。
人口減や円安がまったく影響を与えていないとは言わないが、1人あたりGDP後退の大きな理由はズバリ、政府と日銀の財政・金融政策の失敗にある。増税ありきの緊縮財政に邁進する財務省の愚行はいわずもがな、日銀がミスジャッジを重ねており、これが日本経済を衰退させている。
いまの世界経済は金融緩和が求められているのが実情だ。実際、欧米などの主要国は軒並み利下げをしている。ところが、日銀だけは2024年に2回の利上げを断行。植田和男・日銀総裁は2025年も利上げをする意向を示し、金融引き締めの継続を隠さない。