第1の失敗──現実味のない目標設定
第1は、人口減少に正面から向き合わなかったことである。その要因となったのは、安倍首相が当初、「人口減少に歯止めをかけ、2060年に1億人程度を確保」という目標を掲げてしまったことだった。
この目標は現実味のない“政治的な意気込み”に過ぎなかったが、首相が方針を示した以上、各省庁はその実現に向けて動かざるを得なかった。このため、子育て支援策の強化や外国人の在留要件緩和が地方創生政策として位置づけられたのである。
だが、これらの政策の実効性は二の次だった。日本の少子化の最大要因は、出産期の女性数が激減し続けていることであり、いまさら子育て支援策を強化しても出生数減が回復するわけではない。
外国人の受け入れ拡大も、日本人の減少幅が大きく、焼け石に水だ。多くの地方では人口減少が加速し、「地方創生」への期待はいつしか諦めへと変わっていった。
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