第3の失敗──「地方創生」=自治体の生き残り策ではない
第3の失敗は、地方創生の「地方」の意味を地方自治体でとらえたことだ。これが最大の失敗だったといってもよい。
地方創生本部も、当初から地方自治体の生き残り策を模索したわけではなかった。地方創生のスタート当初は政令指定都市や県庁所在地など全国82都市を「中枢中核都市」に指定し、これらの都市を軸として「少ない人手で効率的に社会を回すエリア」を広げようとした。だが、これには該当しない地方自治体の首長などから「中小自治体の切り捨てだ」といった反発の声が上がり、実質的に頓挫してしまった。
現実は、すでに328の地方自治体で年間出生数が20人未満となっている。地方議会の議員や市役所や役場職員の確保が困難になっているところもある。いまや日本人人口は50年で半減する縮小ペースに突入している。今後は持続し得なくなる地方自治体や集落が登場することが避けられないということだ。
しかしながら、地方の反発に及び腰となった政府は、こうした“不都合な現実”を曖昧にして地方創生政策を展開してきたのである。これでは、残せるはずのエリアまで存続し得なくなる。
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【プロフィール】
河合雅司(かわい・まさし)/1963年、名古屋市生まれの作家・ジャーナリスト。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員のほか、厚生労働省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。ベストセラー『未来の年表』シリーズ(講談社現代新書)など著書多数。話題の新書『縮んで勝つ 人口減少日本の活路』(小学館新書)では、「今後100年で日本人人口が8割減少する」という“不都合な現実”を指摘した上で、人口減少を前提とした社会への作り替えを提言している。