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川辺謙一 鉄道の科学

【鉄道の自動運転事情】ポートライナーで世界初の完全自動運転を実現した日本で、一部の鉄道でしか無人運転が導入されていない理由

国際規格と日本独自のレベル

 現在世界の鉄道では、GoA(Grades of Automation)と呼ばれる規格に基づいて、自動運転のレベルを0から4まで5段階で定義しています。乗務員の業務内容や乗務の有無は、各レベルによって異なります。

 いっぽう日本の鉄道では、「GoA2.5(添乗員付き自動運転)」と呼ばれる独自のレベルがあります。これは、列車の先頭部に動力車操縦者運転免許(以下、運転免許)を持たない係員が乗り、緊急停止操作や旅客の避難誘導を行うものです。

鉄道の自動運転のレベル。国土交通省の資料をもとに筆者作成

鉄道の自動運転のレベル。国土交通省の資料をもとに筆者作成

「GoA2.5」のメリットをざっくり言うと、次の2つがあります。

【A】運転士が不要になる
【B】設備投資がむずかしい地方路線でも導入できる

「GoA2.5」による営業列車のドライバレス運転(運転士が乗務しない運転)は、すでに始まっています。たとえばJR九州の香椎線では、2020年12月より実証実験を実施し、2024年3月から一部の営業列車で実施しています。

 このようなレベルが設けられた背景には、日本の鉄道業界が直面している人手不足の問題があります。自動運転の技術を用いた列車のドライバレス化は、その対策の一つです。

JR九州の香椎線。一部列車でドライバレス運転を実施している

JR九州の香椎線。一部列車でドライバレス運転を実施している

【プロフィール】
川辺謙一(かわべ・けんいち)/交通技術ライター。1970年生まれ。東北大学工学部卒、東北大学大学院工学研究科修了。化学メーカーの工場・研究所勤務をへて独立。技術系出身の経歴と、絵や図を描く技能を生かし、高度化した技術を一般向けにわかりやすく翻訳・解説。著書多数。「川辺謙一ウェブサイト」も随時更新。

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