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あぶない中国共産党

【橋爪大三郎×峯村健司】格差拡大、汚職の蔓延、環境汚染… 改革開放路線で急速に近代化を遂げた中国で“経済発展の矛盾”が放置され続けた理由

改革開放路線の裏には深刻な「副作用」が(写真は2005年の北京。Imaginechina/時事通信フォト)

改革開放路線の裏には深刻な「副作用」が(写真は2005年の北京。Imaginechina/時事通信フォト)

 かつて鄧小平が推し進めた「改革開放」路線で急速な経済発展を遂げた中国。しかし、その影では深刻な「副作用」が生じていた。格差の拡大や汚職がはびこった背景には、一体なにがあったのか。中国に関する多数の著作がある社会学者の橋爪大三郎氏と元朝日新聞北京特派員のジャーナリストでキヤノングローバル戦略研究所上席研究員の峯村健司氏が分析していく(共著『あぶない中国共産党』より一部抜粋、再構成)。【シリーズの第24回。文中一部敬称略】

 * * *
峯村:鄧小平の改革開放路線は、その後の中国の貧富の格差と、深刻な汚職という大きな負債をもたらすことになりました。

橋爪:おっしゃるとおりです。商品経済が拡大して経済活動が活発になった。でも矛盾も表面化した。

 計画経済と商品経済の二本立てだと、計画経済の公定価格と、商品経済で決まる市場価格の二重価格になります。

 すると、不当利得が生まれる。たとえば国営企業が原材料などを国から公定価格で受け取った場合、本来はそれで生産活動を行なうのですが、そんなことをするより、原材料のまま市場に横流ししたほうがよっぽど儲かる。工場の幹部職員が率先して横流しをやり、儲けを幹部と従業員で山分けにし、一部を監督官庁に賄賂で渡せば“三方得”です。国営企業の幹部がブローカーになるんです。

 そうやって大勢現われた官僚ブローカーを「官倒爺(グァンダオイエ)」と言います。人びとに忌み嫌われました。でも彼らは唸るほど金をもっている。改革開放の負の側面です。

峯村:私が初めて中国に行った2005年は、改革開放がピークに達していたといってもいいでしょう。1か月ほど出張に行って北京に戻ってくると、空き地にはビルの骨格ができているのがふつうでした。できたばかりのビルには、外国の高級ブランド店やレストランが入り、連日行列ができていました。こうした状況を見て、中国社会は日本よりも資本主義が進んでいると感じました。

 いっぽうで、改革開放の「負の遺産」も頂点に達していました。共産党や政府のほか、国有企業にまで汚職は蔓延しており、地方の国有企業の幹部が一人あたり50億~60億円もの賄賂を受け取ったり、横領して海外に逃亡したりしていました。

 さらに深刻なのは人民解放軍でした。実際には実施していない軍事演習をしたことにして費用を横領したり、幹部が昇任するごとに賄賂を求めたりする軍高官が後を絶ちませんでした。軍のランクごとに賄賂の「価格表」があり、一階級上がるごとに数百万から数千万円ものカネを渡すことが求められていました。

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