閉じる ×
ビジネス
日本の建設業「凄さと課題」

【業種別では最多の倒産数】建設業界で「人手不足倒産」が加速する特有の事情 有資格の専任技術者がいないと成り立たない業態、10年で社員の4割弱が入れ替わる現実

資格や技術を持った社員の転退職で倒産

 もし、資格を有する専任技術者が1人だけの小さな会社で、その1人が他社に転職してしまう、高齢のため引退してしまうとどうなるでしょうか? 許可を維持できず、事業を続けられません。人手不足倒産の8割は社員数10人未満の零細企業です。

 人手不足倒産は「低賃金で働く人が減ったから」と他業界では言われますが、建設業界に関しては「資格や技術を持った社員が転退職してしまう」ため倒産が起きています。しかも、職業安定法で有料職業紹介事業者が建設業務に就く職業の求職者を紹介することは制限されています。そのため、退職者が出た後に新規で人材を採用することは容易ではありません。ややこしいのですが、大工などの職人が法規制の対象で、現場監督(施工管理)は規制されていません。

 建設業界は法令で有料人材紹介が制約されているにもかかわらず、年間15~20万人が「縁故」「ハローワーク」などを通じて業界内で転職しています。10年で社員の4割弱が入れ替わる計算になります。

 帝国データバンクの調査では2024年度、増収増益見込みの建設会社は22%と前年から増加。他方、減収減益見込みは24%で業績の二極化が進んでいます。景気回復の恩恵を受ける企業がある一方、成長企業に転職する人が増え、人材が流出した企業の業績が悪化しているのです。また、同じ県内でも格差は広がっています。たとえば長野県では富裕層の流入が進む軽井沢と、それ以外の過疎地域の格差が広がっています。

次のページ:倒産が多いのは「下請け」ではなく「元請け」

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。