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ビジネス
日本の建設業「凄さと課題」

なぜ建設業界に“良くない”イメージがまとわりつくのか? 「ゼネコン汚職事件」に端を発して「談合利権」「土建国家」「天下り」のネガティブイメージが刷り込まれた歴史

 土木学会のその後の調査では、2014年の広島土砂災害、2016年の熊本地震、2017年の九州北部豪雨で、自衛隊・消防・警察の災害後の活動は多く新聞で報じられるものの、建設会社の災害復旧活動はほぼ報じられなかったことが指摘されています。地震や豪雨だけでなく、雪国の除雪を担っているのも、多くは地元の工事会社です。

 今も全国の建設会社は災害復旧に命懸けで取り組んでいますが、あまりその活躍は知られていません。以前のような「公共工事批判」は減ったものの、「スルー」されているのです。2019年ごろからゼネコンのテレビCMが復活し、ようやく建設業界は再びメディアに登場し始めますが、1993年からの報道の「空白の30年」を取り戻すまでには至っていません。

 私はテレビの報道番組の監修もしていますが、メディアの方も建設業をどう報道していいかわからず、困っていると感じました。2024年問題(※注/2024年4月から始まった時間外労働の上限規制)の影響を受けるのは物流・建設・医療ですが、報道される回数は物流の方が多いと言えます。建設は物流よりも市場規模が大きく、就業者も多いですが、番組スポンサーとしての関与が少ないためか、建設はあまり報道されません。当然ながら物流も社会になくてはならない存在ですが、災害復旧のことも踏まえると、もっと建設業界は報道されてよいでしょう。

 建設業界は一連の報道の歴史と、「知られていない」現実を踏まえ、積極的に情報発信をしていく必要があります。現場は命を懸けているのに、政治や報道に振り回されるのはおかしい、と私は思います。

※高木健次・著『建設ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)より一部抜粋・再構成

【著者プロフィール】
高木健次(たかぎ・けんじ)/クラフトバンク総研所長・認定事業再生士(CTP)。1985年生まれ。京都大学在学中に実家が営んでいた建設業の倒産を経験。その後、事業再生ファンドのファンドマネージャーとして計12年、建設・製造業、東日本大震災の被害を受けた企業などの再生に従事。その後、内装工事会社に端を発するスタートアップであるクラフトバンク株式会社に入社。社内では建設業界未経験の新入社員向けのインストラクターも務める。2019年、建設会社の経営者向けに経営に役立つデータ、事例などをわかりやすく発信する民間研究所兼オウンドメディア「クラフトバンク総研」を立ち上げ、所長に就任。テレビの報道番組の監修・解説、メディアへの寄稿、業界団体等での講演、建設会社のコンサルティングなどに従事。

高木健次・著『建設ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)

高木健次・著『建設ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)

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