閉じる ×
ビジネス
日本の建設業「凄さと課題」

【能登半島地震から1年】復興を阻む2つの高いハードル 倒壊住宅を公費解体するための厳しい条件、他県の解体工事会社も「利益が出ない」と二の足

能登半島地震から1年。集積所に積み上げられた災害廃棄物(時事通信フォト)

能登半島地震から1年。集積所に積み上げられた災害廃棄物(時事通信フォト)

 石川県能登地方を震源とする「令和6年能登半島地震」の発生から丸1年が経った。しかし被災地には、いまだ倒壊した建物が解体されずに残っているなど、十分に復興が進んでいない現状がある。

 内閣府の報告によると、2024年8月末時点では解体見込み棟数の1割ほどしか解体できていなかった。同年12月22日時点で、公費解体申請数3万4482棟のうち約1万3547棟(39%)が解体完了と遅れを取り戻しつつあるが、依然として状況は厳しい。解体が遅れた原因としては、人手不足や交通の便の悪さ、また「令和6年9月能登半島豪雨」による二重被災などが挙げられるが、他方、法律面における問題もハードルのひとつになっている。

 なぜ能登の復興の初動対応が遅れたのか。事業再生ファンドに勤めていた経験があり、東日本大震災において、震災後の建設会社の経営再建にも携わったクラフトバンク総研所長・高木健次さんの著書『建設ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)より、その理由について解説する。(同書より一部抜粋して再構成)※高の正式表記ははしごだか【全4回の第3回】

中越地震と能登半島地震の初動の比較

 本書執筆時の2024年8月時、「能登は復旧が遅れている」と言われていましたが、具体的にどの点がなぜ遅れたのでしょうか? 能登半島地震と同様に日本海側で発生し、最大震度が近い2004年の新潟県中越地震(中越)と能登半島地震(能登)で復旧期間を比較します(※2024年6月27日付日経新聞記事「能登半島地震で長引く復旧」)。

 災害から150日後の復旧という観点で能登と中越を比較すると、

・仮設住宅の入居完了
・公共土木の災害査定の終了
・上下水道の復旧

 などの項目で、能登の方が中越より復旧が遅れています。中でも能登は、

・半島の先端部が震源地だったため、道路が途中で寸断され、救援救助が難しい
・多くの消防や警察が休みの元旦に起きた
・老朽化した水道管が地震で破壊され、生活に不可欠な水が届きにくい

 などの要素が絡んで、より復旧を難しくしています。

 全国の自治体の水道部局職員が輪島市などに救援に駆け付けましたが、宿泊場所も限られ、金沢市などから往復10時間かけて被災地に通った局員もいるそうです。

 能登で起きた問題は全国どこでも起こり得ます。豪雨災害でも、過疎化の進む地域で復旧が長引く傾向があり、人口減少に伴う人手不足・財源不足により災害後の迅速な回復が困難になっていくリスクが専門家から指摘されています。

 また、土木を中心とする技術系公務員が全国的に不足しています。能登半島地震で大きな被害を受けた石川県内にも、今年度に入ってから全国の自治体から250人を超える応援職員が派遣され、うち7割が技術系です(2024年5月27日時点)。石川県内の職員だけでは今回の災害に対処できない状況にあり、全国から集まった技術系職員の応援によってカバーされていることがわかります。

次のページ:公費解体を行うための「法律」のハードル
関連キーワード

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。