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ビジネス
日本の建設業「凄さと課題」

なぜ建設業界に“良くない”イメージがまとわりつくのか? 「ゼネコン汚職事件」に端を発して「談合利権」「土建国家」「天下り」のネガティブイメージが刷り込まれた歴史

「ゼネコン汚職事件」から始まった報道の「空白の30年」とは(イメージ)

「ゼネコン汚職事件」から始まった報道の「空白の30年」とは(イメージ)

 キツい・汚い・危険の「3K」──バブル絶頂期の1989年に生まれた言葉だ。建設業といえば「3K」という印象を抱く人は少なくないようだ。しかし昨今では、大手ゼネコンのCMに人気俳優が起用されたり、武庫川女子大学(兵庫)や日本女子大学(東京)などの女子大学で次々に建築系学科が開設されたりするなど、建設業界に対するイメージも変化しつつある。

 そもそも、なぜ建設業界には“マイナスイメージ”が付いてまわっていたのか。その背景には1993年の「ゼネコン汚職事件」に端を発する“建設業バッシング報道”が影響しているという指摘がある。

 報道番組で建設業界の解説も行なうクラフトバンク総研所長・高木健次さんの著書『建設ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)より、建設業界が報道されてこなかった「空白の30年」を紐解く。(同書より一部抜粋して再構成)※高の正式表記ははしごだか【全4回の第4回。第1回から読む】

1993年の「ゼネコン汚職事件」から広まったネガティブイメージ

「建設業界には良くないイメージがある」と言われることがあります。なぜその「イメージ」が生まれたのか? 公益社団法人土木学会の分析レポートや国土交通白書から「医者より土建屋の方が批判しやすい」とされてきた報道の歴史を紐解きます。

 1993年、ゼネコン各社から政界に多額の賄賂が贈られていることが判明し、建設大臣や県知事まで逮捕される事態になった「ゼネコン汚職事件」。1970年代のロッキード事件に続き、再び新聞各紙に「談合利権」「土建国家」「天下り」といった言葉が繰り返し並びます。この際、公共事業や建設業界に関するネガティブイメージが形成されます。ゼネコン各社もテレビCMを自粛し、テレビ局とゼネコンの接点がなくなります。ここから建設業界はマスコミに報道されにくい「空白期間」に入ります。

 談合体質から抜けられなかった建設業界にも問題はありますが、やや過剰な「公共事業叩き報道」が続きます。2001年、当時の長野県知事が「脱ダム宣言」のもと公共事業批判を展開し、報道もそれに便乗するなど、建設業界は「攻撃の対象」になっていきます。長野県の建設会社ではこの時期、賞与が払えず苦しんだそうです。

 報道だけの影響ではありませんが、1997年の橋本内閣で公共事業関係費が削減されます。1997年はちょうど建設業就業者数のピークで、その後、建設業就業者は15年で大幅に減っています。2001年以降の小泉政権下で公共事業関係費はさらに削減されます。

次のページ:民主党政権で再び増えた“公共事業バッシング”

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