会見で激しい日本批判を展開したクリフスCEOのゴンカルベス氏(クリフスのYouTubeより)
上にも下にも直言する橋本流には経済界にファンも
前出の経産省幹部が注目するのは口だけでなく実際にその後、組織を変えたうえで、「グローバル生産能力1億トン」という自ら打ち立てた新たな目標に手が届くところまでこぎつけたことだ。
ちなみに鉄鋼業は一度投資すれば超長期に運営しなければ資金を回収できない。その土地の国家の歴史や地政学上の現実をあらかじめ踏まえた判断が必要なビジネスだ。
「独自の史観のようなものが確立されているのか、橋本さんは自分で思い描いた通りに合理化、価格引き上げ、グローバル展開と順番に手を打ってきた。相談役が何人もいるような過去に引っ張られやすい会社で、ここまで自分の考えに従って組織を動かせる経営者はそういない」(前出・経産省幹部)
上にも下にも直言する橋本流で、煙たがる上司から左遷されたこともあるが、経済界にファンもいる。
橋本氏の部長時代から交流がある伊藤忠丸紅鉄鋼元会長の兼田智仁氏は、過去の鉄鋼エリートとは違ったと語る。
「かつて商社マンが鉄鋼会社に行くと、椅子もなくゴミ箱に座って注文を取ったものです。ところが橋本さんは全然違って対等目線で“俺がべにちゅうさんに期待しているのはこれとこれ。ウィンウィンを目指したい”とオブラートに包むこともない。それが面白かった」
今度は「買収は望まない」と公言するトランプ氏に、「ウィンウィンのディール」と高ぶらせることができるのか。