かつて日産自動車を破綻寸前の危機から救い、その後に“追放”されたカルロス・ゴーン氏(時事通信フォト)
ホンダとの経営統合協議が「破談」となり、パートナーを失った日産は再び経営危機に立たされている。かつて、経営トップとして日産を破綻寸前の危機から救い、その後に“追放”されたカルロス・ゴーン元会長は、この現状をどう見るのか。レバノン・ベイルートのゴーン氏にリモート・インタビューを行なった。ここでは、窮地に陥った日産が“組む相手”について、ゴーン氏の見解を紹介する。
仮にイーロン・マスクが経営権を握ったなら?
インタビュー中、ゴーン氏の背後の棚上に真っ赤なミニカーが飾られているのが見えた。
──後ろの赤いミニカーは日産の車ですか?
「赤い車……。これはルノー、いやアルピーヌのモックアップ(模型)だ。日産社員からもらった思い出の品もたくさんありますよ」
そう言うとゴーン氏はカメラをずらし、壁面に掛けた額に収められた自身のイラストを映した。
「見えるだろうか。これは私がサムライの姿で工場を訪問した場面を描いてくれたものだ。良いお土産はたくさんあるし、私も、私の子供たちも日本が好きだ。今も日本が恋しくなることがある。日本人に恨みがあるなんて思わないでほしい」
──日産には「技術戦略」が必要だと述べたが、今後、どこかに助けてもらうしかないのか。
「私の理解では、日産は外部からの資金援助を必要としているのだろう。彼らは我々が長年蓄積した現金をすべて使い果たした。これは1999年当時にもあった問題だ。しかし、私は資金不足が日産の“病気の根源”だとは考えていない。日産に投資しようとする人は、根本的な変革を求めることになります。
経営陣、役員、そして新しいチームを率いて会社を再生させなければ、カネを注ぎ込み、テクノロジーを導入しても解決にはならないだろう。鴻海との話し合いの行方は不明だが、もし買収となれば、日産の経営陣が全員交代することは避けられないだろう。最終的に変化をもたらすのが経営陣であることを、鴻海は知っている」