仕事もプライベートも、どちらも大事(イメージ)
「ワークライフバランス」の重要性が叫ばれて久しい昨今、個人の権利を尊重する社会に向かいつつあるのは歓迎すべきことだろう。一方で、仕事とプライベートの板挟みにあい、思うように業務が進行しない現場もあるようだ。
国際的に高い評価を受けるマネジメント理論の実践者であるゴールドラットジャパンCEO・岸良裕司氏は、会社が抱える“ワークライフバランスの板挟み問題”を害虫に例え、「イタバサミ虫」と呼ぶ。世界的ベストセラー『ザ・ゴール─企業の究極の目的とは何か』(ダイヤモンド社)の著者、エリヤフ・ゴールドラット博士の愛弟子でもある岸良氏が、「イタバサミ虫」の“駆除方法”を、ゴールドラット博士が提唱した理論を用いて解説する。
岸良裕司氏の著書『組織をダメにするのは誰か? 職場の問題解決入門』(クロスメディア・パブリッシング)より、一部抜粋して再構成。【全4回の第3回】
板挟み管理職にメンタルヘルス問題が起こる理由
「仕事」と「プライベート」、どっちを優先したらいいのだろうか?
こんな板挟みに悩むようなことがあったら、あなたの会社には「イタバサミ虫」が生息している可能性が高い。「仕事で成功する」ためには「仕事を優先する」必要があるが、この場合「プライベート」が犠牲になりかねない。
一方で、「プライベートを大切にする」ためには「プライベートを優先する」必要があるが、この場合には「仕事で成功する」ことが犠牲になりかねない。
「働き方改革」が世間で叫ばれる昨今、いき過ぎた残業を減らし、プライベートを大切にしてもらおうと残業削減に取り組む会社は少なくない。社内に「働き方改革プロジェクト」を立ち上げ、外部講師を招いて講演を実施したり、各部署の残業時間を監視したりすると、現場の残業は削減されるようになる。
しかし、業績が下がるのは許されるはずもない。こなさなければいけない仕事が減るわけではないので、家に仕事を持って帰ってやるようなことが起きる。それを避けようとすると、しわ寄せは残業代のつかない管理職に行く。
やがて管理職の周辺にはイタバサミ虫が大量発生し、精神的不安を引き起こすストレス物質「モヤモヤ」を放つ。ひどい時にはメンタルヘルス問題が多発する原因にもなりかねないので注意が必要である。