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トップ5%の戦略コンサルが考える“思考法との向き合い方” 画期的な視点は本来わかりようもない他者の異質性をとらえることから生まれる

共感することが目的ではない

 では、デザイン思考やエスノグラフィ調査は有効ではないのか。そうではありません。方法論が悪いのではなく、何がダメなのかを簡単に言うと、どんな方法論を使おうが観察者の目線・視点が日常ならば日常の風景しか見えないのは世の理なのです。観察する側の人間が観察対象のユーザーと同じような生活文化を背景に、大して違わない価値観やものの見方・感じ方でもって無自覚にその消費者の生活を観察したところで、見慣れた、聞き慣れた予定調和なことしか見えないし、行動の背後にある無意識の価値判断などに気づけるはずもありません。

 お気づきかもしれませんが、元来エスノグラフィは原住民などに対する西洋文化人の強烈な異文化体験の記録であって、他者性の眼差しを通じて驚きを持って他者の文化や思考の異質性、逆に意外な同質性に気づく方法なのです。

 そのため、ビジネスにおいて手順やかたちだけエスノグラフィの方法を消費者理解に応用したところで、それだけで画期的な新発見ができるなんて都合のいいことはないわけです。これまでは見えていなかったことを発見するうえで大事なのは、方法ではなく異質への他者性の眼差しなのです。

 デザイン思考では「客観視点ではなくユーザーへの共感が大事」とよく言われますが、文化人類学者ならどちらも大事で、そのこころは、客観を得るためにも共感が必要と答えるでしょう。

 そもそも「他者」のことを主観的・共感的に理解できる、理解すべきと考えるのは、誠実なようでいて、かなりナイーブかつ傲慢な態度です。誰彼なく「お前のことわかる、わかるわ~」などと言う人がいたら、少し胡散臭いでしょう?

 いずれにせよ、根本の問いは共感が目的なのではなくて、本来わかりようのない他者や強烈な異文化をどうすれば理解できるか、そのための眼差しや方法の工夫です。デザイン思考にせよ、エスノグラフィ調査にせよ、方法論自体はそれだけを取り出してもニュートラルなものなのです。

※金光隆志・著『戦略コンサルのトップ5%だけに見えている世界』(クロスメディア・パブリッシング)より一部抜粋・再構成

■第2回記事:【問題をリフレーミングする】ロジックを超えた「ひらめき」「直感」を生むには? 戦略コンサルが明かす日常の風景を非日常化する「思考枠」の広げ方

【著者プロフィール】
金光隆志(かねこ・たかし)/株式会社クロスパート代表取締役、戦略コンサルタント。京都大学法学部卒業後、ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。同社マネージャーを経て、株式会社ドリームインキュベータ(DI)の創業に参画、取締役を歴任。DI取締役退任後、ベンチャー企業の代表などを経て、株式会社クロスパートを創業、代表取締役に就任する。クロスパートでは、戦略立案や組織改革はもとより、長期事業構想、事業アイデア創出、事業開発、コーポレートベンチャリングなどの事業創造に関わるテーマに数多く従事。2024年には未来を担うリーダー人材の育成・研修事業を行う株式会社クロスサイトを創業した。

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