「3商品ラインはいい」が、「準プレミアムは終売」、その代わり、「ニーズがすでにあるプレミアム品の平均実売価格を3割値下げ」して、「準プレミアムよりも高いが、欲しかったプレミアム品が手の届く範囲になる客」を取り込み、その後に「従来プレミアム価格より少し高いスーパープレミアム品を投入」という戦略にたどり着きました。
これによってプレミアム品の市場規模は1.5倍になり、そこでシェアを大きく伸ばし、新たに投入したスーパープレミアム品は当初、市場全体の1割弱程度の浸透でしたが、競合商品がなかったため1割の顧客を独占。結果、売上も収益も大きく伸ばすことに成功しました。
「準プレミアム品をどうリポジショニングするか」という思考枠からは、「準プレミアム品の商品特徴や提供価値をどうリニューアルし、どう価格付けするか」などの問いが導かれます。その問いに基づいて調査や企画を進めれば、必ず何がしかの答えが得られます。
しかし、その場合に出てくる答えは、最初の思考枠の外へ出ることは決してありません。出てくるのは、「準プレミアム品をどうリポジショニングするか」についての正しい答えです。
思考枠の設定がいかに思考の範囲や質を規定するか、少しご理解をいただけたでしょうか。「そもそもの問いをひっくり返すとかくだらない。インチキじゃないか」と思う方もいるかもしれません。確かに、思考枠の外の思考はコロンブスの卵みたいなところがあります。でも、だから効果絶大なのです。これを「インチキ」と感じ、「与えられた問いに答える正しい思考」をしなければならないと思うこと自体、正当や正解という価値規範に関わる思考枠にとらわれている証でもあります。
余談ですが、消費者調査に基づいて手を打っても結果が出ないことはよくあります。そこで「消費者調査なんてあてにならない」「客観分析ではなくて主観的な構想が大事だ」云々と飛躍した論理を展開される方もいます。
お言葉ながら、構想とは常に主観によるのであって、この手の論理は単に調査や客観分析を否定しているだけなのですが、少なくともこの事例では消費者調査と矛盾がないどころか、消費者調査結果に基づき、かつ準プレミアム品が受容されないという事実も素直に受け止め、「これらが無矛盾だとすると」と客観的事実から論理を愚直に追って誕生した戦略とさえ言えます。
※金光隆志・著『戦略コンサルのトップ5%だけに見えている世界』(クロスメディア・パブリッシング)より一部抜粋・再構成
■第1回記事:トップ5%の戦略コンサルが考える“思考法との向き合い方” 画期的な視点は本来わかりようもない他者の異質性をとらえることから生まれる
【著者プロフィール】
金光隆志(かねこ・たかし)/株式会社クロスパート代表取締役、戦略コンサルタント。京都大学法学部卒業後、ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。同社マネージャーを経て、株式会社ドリームインキュベータ(DI)の創業に参画、取締役を歴任。DI取締役退任後、ベンチャー企業の代表などを経て、株式会社クロスパートを創業、代表取締役に就任する。クロスパートでは、戦略立案や組織改革はもとより、長期事業構想、事業アイデア創出、事業開発、コーポレートベンチャリングなどの事業創造に関わるテーマに数多く従事。2024年には未来を担うリーダー人材の育成・研修事業を行う株式会社クロスサイトを創業した。