農業への過剰な支援の「4つのデメリット」
欧州委員会 JRC-IPTS他の論文に話を戻す。農業への過剰な支援にはデメリットが多い。デメリットについて論文で紹介されている順に述べていくが、4番目のデメリットに着目してほしい。なぜ、日本がコメ価格高騰に苦しんでいるのかという点についての決定的証拠といえよう。
第一に、食べ物の供給が減る。政府が農業を守りすぎると、農家は競争しなくてもやっていけるため、効率の悪い生産が続いてしまう。NACが1.2を超えると食べ物の供給が減るという研究結果が出ている。これにより、新しく農業を始める人が増えにくくなり、農業の活力が失われる。
第二に、食べ物の値段が高くなる。NACが1.4以上になると、食べ物を手に入れにくくなるという結果が出ている。国内の農産物市場が政府の支援によって守られ続けると、消費者は高い価格で食べ物を買わなければならなくなる。特に低所得の人にとっては負担が大きくなる。
第三に、市場がゆがむ。NACが1.5を超えると、価格の上昇や供給の減少が加速することが研究で示されている。市場がゆがむと、農業の生産性が下がり、消費者にとって不利な状況が生まれる。
第四に、価格が不安定になる。支援が行き過ぎると、農産物の価格が極端に変動しやすくなる。NACが1.4を超えると、価格の変動が大きくなるという研究結果がある。市場の調整機能が失われることで、農産物の価格が予測しにくくなり、安定した供給が難しくなる。
自民党は農業分野の保護政策を実施することが、日本の食糧安全保障、そして農家のためになると頑なに信じているのだろう。しかし、この研究の結果を見ると、その政策は逆効果になっている。過剰な支援は、食料の供給を減らし、価格を上げ、市場をゆがめ、価格の安定性を損なう。日本は世界の中でも特に農業支援が大きい国だが、それが農業の成長を妨げているわけだ。
農業政策は大きく見直すべきである。支援をやめるのではなく、必要なところに適切な補助を行いつつも、競争力を高める政策に切り替えることが重要だ。現在の政策を続ける限り、日本の農業は国際競争力を失い、日本の経済も衰退していく。
農家や農業、日本の稲作文化を破壊しているのは、農水省であり、自民党であるという現実を、まずは受け止めるべきだ。
【プロフィール】
小倉健一(おぐら・けんいち)/イトモス研究所所長。1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立して現職。