元刑事の阿部佑介さん(左)と元不良の串田大我さんのコンビ「デカトワル」(『デカトワル 人生を変えたホリスティックとの出会い』の表紙)
全国を回る「デカトワル」
そんなことを“ムショ仲間”の黒柳桂子さん(55才、「柳」は旧字体)に話したら、「面白い人がいるよ」と返ってきた。黒柳さんは岡崎医療刑務所(愛知県)の現役の管理栄養士で、日々、受刑者とともに食事を作っている。著書『めざせ!ムショラン三ツ星』(朝日新聞出版)で、塀の中の食事が決して「クサいメシ」ではないことを説いている。
黒柳さんが教えてくれたのが「デカトワル」というコンビだ。男性2人組で、全国各地で食育に関する講演をしているという。さっそく見に行った。「どーもー、デカでーす」「ワルでーす」「デカトワルでーす」と舞台に飛び出してきたのは、元刑事の阿部佑介さん(38才)と元不良の串田大我さん(42才)。2人の経歴からして激しい。
「デカ」の阿部さんは18才で警察官になり、最初は交番勤務をしていたんだけど、気がついたら危険な現場に真っ先に飛び込んでいく特殊部隊の一員となり、その後、殺人や強盗を扱う捜査第一課の刑事になった。取り調べをする中で、「犯罪者の食生活は、みな乱れている」ことに気づいた。紆余曲折あって34才で退官した阿部さんは、栄養コンサルタントの資格を取った。食習慣の改善やメンタルケアで、非行や犯罪を減らすことを目指したという。
「ワル」の串田さんは、12才でバイク窃盗で補導され、その後、少年鑑別所、闇金融勤務、少年刑務所などを経験した。29才で出所後、「世の中の役に立つ人間になる」ことを決意し、やはり紆余曲折あって栄養学の世界に辿り着いた。そして、志向性が一致した2人が出会い、一緒に活動することにしたのだという。