“食と心”をテーマに全国で講演する「デカトワル」(公式ホームページより)
人間が生きていくために、絶対に切り離せないのが「食」というもの。体験取材を得意とする女性セブンの名物ライター“オバ記者”こと野原広子さんは、刑務所の取材を通して知り合った“ムショ仲間”から、食の大切さを教えてもらったという。前編記事に続き、食に関する活動を行っている元刑事と元不良のコンビ「デカトワル」についてオバ記者が綴る。【前後編の後編】
■前編記事:オバ記者が知り合った“ムショ仲間”「デカトワル」 全国で食育に関する講演をする“元刑事”と“元不良”コンビ誕生までの紆余曲折
特殊部隊班が対面したのは“中学2年生の凶悪犯”
「どーもー、デカです」
「ワルでーす」
「警察に勤めてました」
「元闇金で刑務所に6年つとめてましたー」
異色のコンビ・デカトワルが、ゆる~い感じでステージに出てくると、それだけで満席の会場がクスクス笑いに包まれた。3月初旬、愛知県岡崎市で開かれた講演会「元刑事×元受刑者×刑務所栄養士が語る 食と心の講演会」の一幕だ。
デカトワルは男性2人組で、全国各地で「食育」に関する講演をしている。
「デカ」こと阿部佑介さん(38才)は元刑事で、交番勤務のほか、SAT(特殊部隊)やART(突入救助班)に属したこともある。
「特殊部隊員は、いざとなると暴力団や組織犯罪のアジトの鍵をぶっ壊してガラスを割って突入します。そこで、ある事件の凶悪な連続性犯罪者と出会ったんです」
阿部さんが対面した犯人は、なんと中学2年生の男の子だった。学校にもちゃんと行っているし部活もしている。そんな子がなぜ凶悪事件の中心にいるのか!?
「取り調べのほとんどは雑談です。そこで何気なく『好きな食べ物は?』と聞いたら、カップ麺の銘柄をあげるんですよ。彼は父子家庭で、食事はもっぱら、置いてあるお金で食べたいものをコンビニで買って食べていたんです。それ以降、取り調べのとき、意識して犯罪者の日頃の食事について聞くようにしたら、例外なく、まともな食事ではありませんでした」
そうした体験を積み重ねた阿部さんは、栄養状態と精神面のかかわりを総合的に捉える学問「ホリスティック栄養学」を知り、その栄養学のコンサルタントの資格を取った。食習慣の改善やメンタルケアで非行や犯罪を減らすことを目指すことにした。