例えば銀行の窓口に行くと、「番号札発券機」の横に操作方法を案内するスタッフが必ずと言っていいほど立っています。わざわざ機械を導入して効率化を図っているのに、その機械の横に人間が立って案内している。この光景は、外国人から見ると異様でしかありません。
アメリカであれば、あの「番号札発券機」の横に立っているスタッフは真っ先にリストラ対象になるでしょう。しかし日本で大規模なリストラを断行しようとすれば、社会的批判にさらされがちです。
したがって日経平均株価を構成するような日本企業の多くは、人件費や人員を削減したくてもなかなか思うようにできないのが実情です。
こうした日本特有のビジネス環境では、抜本的な改革や、業務の自動化、効率化が進むわけがありません。
さらに、日本企業は景気後退や業績悪化の局面においても、思い切った人員削減に踏み切りづらい傾向があります。そのため、経営環境の変化にすみやかに対応することが難しく、業績の急激な悪化を招きやすいと言えるでしょう。
もちろん、日米どちらの経営スタイルに優劣があるのか、単純に結論づけることはできません。日本型の雇用慣行には「雇用の安定」「従業員の高い帰属意識」「長年の経験に基づく、熟練した技術力の蓄積」といった利点もあります。
しかし「企業としての競争力」という観点から見れば、景気や企業の業績に応じて柔軟に雇用を調整できるアメリカと、それが難しい日本とでは、どちらが国際競争を勝ち抜き、業績を上げ、株価も上がりやすいか。その答えは、火を見るよりも明らかです。
■後編記事《「日本経済全体は期待薄だが…」エヌビディア株のポテンシャルをいち早く見抜いた“伝説のプログラマー投資家”がポートフォリオに加えた日本企業の名前》につづく
※中島聡・著『メタトレンド投資 10倍株・100倍株の見つけ方』(徳間書店)より一部抜粋・再構成
元マイクロソフトのプログラマーで、さまざまなソフトウェア開発をおこなう傍ら、投資家としても活躍する中島聡氏(写真:徳間書店提供)
【プロフィール】
中島聡(なかじま・さとし)/1960年北海道生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修了。マイクロソフトでソフトウェア・アーキテクトとしてWindows95などの基本設計を手がける。2000年にXevo(旧UIEvolution)を創業。2019年に同社を3億2000万ドルで売却。現在はさまざまなソフトウェア開発を行っている。