元マイクロソフトのプログラマーで、さまざまなソフトウェア開発をおこなう傍ら、投資家としても活躍する中島聡氏(写真:徳間書店提供)
2001年のドットコムバブル崩壊時にAmazon株を手放した失敗から、「有望企業は何があっても長期保有する」という教訓を得たという元マイクロソフトの“伝説のプログラマー”で投資家の中島聡氏。NVIDIAをいち早く見出したことでも知られる中島氏は、なぜ「ガチホ」(長期保有)が不可欠と考えるようになったのか。その具体的な考え方を、中島氏の著書『メタトレンド投資 10倍株・100倍株の見つけ方』(徳間書店)から再構成して紹介する。【前後編の前編】
ガチホすることが長期な資産形成において欠かせない視点
過ぎ去った過去はもう変えることはできません。私も過去の失敗をいつまでも引きずるような性格ではありません。それでもドットコムバブル崩壊時にAmazon 株を安値で投げ売りしてしまった失態は、苦い経験として今でも私の脳裏に深く刻まれています。
しかしその失敗があったからこそ、投資における重要な教訓を得られました。それは「市場全体がクラッシュするような大暴落の局面でも、冷静さを保ち、長期的な視点を持ち続ける」ということです。
自分が有望だと信じ、惚れ込んだ企業の株は、いかなる状況でも信念を持って長期保有する。あの暴落以来、それが私の基本的な投資哲学、ゆるぎない投資方針となっています。
のちに起きたリーマン・ショックの際に、ドットコムバブル崩壊時の痛い勉強代が大いに役立ちました。
2008年9月、アメリカの大手投資銀行、リーマン・ブラザーズの経営破綻をきっかけにリーマン・ショックが発生。その影響は全世界に波及し、世界同時株安という未曽有の金融危機へと発展しました。とうぜん、私の保有する株式資産も一時的に大きく評価額が下落しました。
しかし、ドットコムバブルで苦い経験をした私はいたって冷静でした。一時的に大きな含み損を抱える状況にはなりましたが、含み損はあくまでも含み損。売却して「確定」しないかぎり、損失にはなりません。
嵐が過ぎ去るのを待つという心構えで、じっと忍耐強く保有し続けました。すると約2年後には、株価は下落前の水準まで回復。最終的には、世界経済を襲った未曽有のリーマン・ショックにおいても、実質ノーダメージで乗り切ることができたのです。
将来大きな成長が見込めると確信できる企業の株であれば、短期的な株価の上下動に一喜一憂せず、じっと我慢する。いわゆる「ガチホ」(ガチでホールド)することが、長期な資産形成においては欠かせない視点なのです。