そこから米の取引で、利益を得たい業者は自由に米を買い、市場に参入可能となったのです。当然、買占め・売り惜しみで価格が上がれば、業者は儲かります。不当なようですが、自由競争のもとでは、コロナ禍で譲渡制限されたマスクのように『国民生活安定緊急措置法』の適用が指定された特別な物品以外は、やむを得ません。
それが嫌なら、消費者は生産者である農家と直接取引するなどして、納得できる価格で購入するしかありませんが、実際には農家と縁がない消費者には、対応できないでしょう。備蓄されている米を政府が売り出すのも、ひとつの方法ですが、米相場の予想は難しく、期待通りにいくかは不明です。
さて、法的な対策ができないかですが『食料供給困難事態対策法』という法律があり、干ばつ等の自然災害によって米穀等の供給が大幅に不足し、国民生活の安定などに支障がでる「食料供給困難事態」が生じたとき、国は業者に出荷計画の調整等を要請することができますが、買占め・売り惜しみは対象外です。しかし、有力業者同士が示し合わせて価格を釣り上げたり、流通量を絞っていれば『独占禁止法』が禁止するカルテルや不公正な取引方法に該当するので、処罰される可能性はあります。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2025年3月28日・4月4日号