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ビジネス
楽天・三木谷浩史社長が明かした「次なる野心」

《普及が進まないのは、新しすぎるから》携帯電話見本市「モバイル・ワールド・コングレス」で楽天モバイルがアピールした「Open RAN」、三木谷浩史社長が現地で語った「勝算」

MWCで海外メディアの質問に答える三木谷浩史社長(筆者撮影)

MWCで海外メディアの質問に答える三木谷浩史社長(筆者撮影)

 楽天グループの2024年通期決算は5年ぶりに営業黒字を達成、危機説のあった楽天モバイルの収益改善が大きかったという。野心の尽きない三木谷浩史社長は、すでに携帯事業の“次”を見据えているという。三木谷氏も参加したスペイン・バルセロナで開かれた携帯電話見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」の模様をジャーナリストの大西康之氏がレポートする。【全3回の第2回】

「完全仮想化」を実現した“新しすぎる”技術

 今年のMWCで楽天モバイルが売り物にした「Open RAN(異なるメーカーの通信機器やソフトウエアを組み合わせて構築するRadio Access Network=通信ネットワーク)」について少し説明が必要だろう。

 ITの世界では「異なるメーカーの通信機器やソフトウエアを組み合わせて構築する」ことを「オープン・アーキテクチャー(開かれた構造)」と言う。その反対を「プロプライエタリ(排他的・占有的構造)」と呼ぶ。

 1980年代まではコンピューターの世界もプロプライエタリが主流で、IBMやユニシスといったコンピューター・ベンダー(企業)が、自社のメーンフレーム(大型汎用コンピューター)を中心にしたシステムを構築していた。ユーザーは一つのベンダーに占有され、乗り換えは困難だった。

 それが1990年代、メーンフレームを使わず複数のパソコンやサーバーを繋いで処理する「クライアント・サーバー型」のシステムが台頭する。ユーザーが複数のメーカーのパソコンや周辺機器を自由に組み合わせることができるようになり、爆発的な価格競争が起きた。

 一方、携帯電話ネットワークは2025年の現在もプロプライエタリが主流だ。米ベライゾン、英ヴォーダフォン、NTTドコモといった通信会社は特定のベンダーに依存し、高額な専用機器を使っている。そこに一石を投じたのが楽天モバイルだ。

 専用機器(ハード)に依存せず、通信機能の大半をソフトウエアで処理する「完全仮想化」を実現した楽天モバイルのネットワークは、特定のベンダーに依存しないオープン・アーキテクチャーで構築されている。携帯電話の世界でこれを「Open RAN(O-RAN:オーラン)」と呼び、楽天モバイルが世界の先頭を走る。

 2017年、楽天モバイルが「完全仮想化ネットワークでサービスを開始する」と発表した時、「世界の大手通信キャリアのCEOはミッキー(愛称)、無理だと思うけどまあ頑張って、と笑っていた」(三木谷氏)という。

 だが2020年にサービスを開始してから5年、日本の契約数は850万件を突破、単月黒字も達成した。海外の携帯電話事業を担当する楽天シンフォニーが完全仮想化の技術を提供したドイツの新興通信会社「ワン&ワン」の契約件数も同規模だ。

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