携帯電話見本市「MWC」は多くの人で賑わった(筆者撮影)
アマゾンやグーグルなどのAIの弱点を埋めるような開発に勝機
──今年のMWCでO-RANと並んで目立つのが生成AIに関する展示です。米国の独走状態だったところに、「ディープシーク」で中国が割って入りました。
「ディープシークはかなりの性能がありそうなので、生成AIに凄まじい投資をしてきた米国のハイパースケーラー(『AWS』のアマゾン・ドット・コム、『アズール』のマイクロソフト、『グーグル・クラウド』のグーグル)は大変でしょうね。
生成AIはハイパースケーラーがやっている(どんな問題でも解を導き出す)百科事典型と、(特定の目的に特化した)バーティカル・スペシフィックなタイプに分かれると思うのですが、百科事典型は莫大な投資が必要で、利用料も高額になる。問題は、そこまでの料金を払って使う人がどれだけいるかです」
──楽天グループも独自のAIを開発していますね。
「ハイパースケーラーがやっているAIの弱点を埋めるような開発を進めています。そこには日本企業にも勝機があると思っています。
AIというのはアルゴリズムなので、(パソコンやスマホのOSと同じように)やがてコモディティ化(一般化)していくでしょう。僕が中国だったら、ディープシークの技術をオープンにして、世界中を横並びにさせますね。だってAIが米国の独壇場になったら困るじゃないですか。するとAIも『リナックス』(基本設計が公開されているOS)みたいになっていくわけです。
AIがコモディティ化した時、最後に違いを生むのはデータです。楽天グループにはネットショッピング、カード、トラベルなど楽天経済圏にまつわる様々なデータが集まっていて、そこにモバイルのデータが加わりました。世界的に見ても特異なデータセットを持つ会社なので、面白いサービスを生み出していけると考えています」
過熱する生成AI市場、そして通信業界の勝者はどこになるか。
【プロフィール】
大西康之(おおにし・やすゆき)/1965年生まれ、愛知県出身。ジャーナリスト。1988年早大法卒、日本経済新聞社入社。日経新聞編集委員などを経て2016年に独立。著書に『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』(東洋経済新報社)、『最後の海賊 楽天・三木谷浩史はなぜ嫌われるのか』(小学館)など。
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※週刊ポスト2025年3月28日・4月4日号