職場結婚のどこに問題があるのか?(イメージ)
宮崎産業経営大学で“職場結婚”をした男性教授と女性助教が、大学側から懲戒処分を受けたことが、物議を醸している。2人は昨年、結婚を大学側に報告すると女性の雇い止めが通告され、夫婦で撤回を求めたところ、今度は「規律違反」を理由に2人とも戒告の懲戒処分に。女性は事務職員に配置転換され、男性は教授から准教授に降格されたという。夫婦は処分の無効を求めて大学側を提訴したことも明かしている。
このことはSNSでも大きな波紋を広げ、《時代錯誤も甚だしい》《まだこういうのが残っていることに驚き》など、“昔はあった”ことに言及する声も少なくない。職場結婚をしたことがきっかけで、意図せず転勤や退職する羽目になった人たちは、どのように感じていたのだろうか。
職場結婚したら女性が海外転勤を命じられた
「昔はうちの会社でも、職場結婚した夫婦は“引き離される”のが当たり前だった」と振り返るのは、新卒以来、大手メーカーに勤務している男性会社員・Sさん(50代)だ。自身が見聞した事例を明かす。
「30年ぐらい前、新卒の初期配属は工場が多かったんです。特に理系や大学院卒なら地方の工場で現場経験を積んでから、本社や支社に配属されるというパターンが王道でした。 そういう時代、僕の同期の女性が、初期配属先だった工場で出会った男性社員と結婚しました。2人ともいわゆる“理系枠”で、男性は女性より少し年上の先輩社員。当時2人とも工場勤務だったのですが、突然女性側に海外の工場に異動命令が出たのです」
その女性社員にはキャリアを積みたいという目標もあったため、いわれるままにヨーロッパへ。新婚でいきなり別居となった。
「部署内で結婚したら異動になる、というのは通説でした。人事的な事情を聞いたことがあるのですが、“まわりが気まずい”という感情的な理由が大きかったように説明されたように記憶しています。夫婦はSkypeのようなビデオ通話でコミュニケーションを取っていましたが、女性は子供もほしかったようで、当時男性側から『自分が会社を辞めて女性の元に行くべきか』というような悩みも聞きました。一方で、会社は“異動命令を出しても辞めない”姿勢を評価するみたいな感じがあって、女性は3年の海外勤務の後、本社に戻って来たらみるみる出世。あっという間に管理職になりました」