ライブ会場で痴漢に遭った女性たちの声(写真:イメージマート)
アーティストのライブ会場で起こった、観客の“痴漢行為”が物議を醸している。現場となったのは、3月16日、大阪でおこなわれたバンド「礼賛」のライブ会場だった。
礼賛は、2021年に結成されたバンドで、ボーカルはお笑いコンビ「ラランド」のサーヤ(同バンドでは「CLR」名義)、ギターは「ゲスの極み乙女」の川谷絵音(「晩餐」名義)が担当。そんな礼賛のライブ会場で“痴漢行為”が行われたと告発があった。
ある女性客が、自分の胸に男性客の手が複数回触れ、スタッフを呼んだことをSNSで発信。「礼賛」の公式SNSアカウントも「痴漢を容認しない」旨の声明を発表した。また他のバンドやアーティストも「不適切な行為を決して容認しない」といった声明を次々に発表。その一方で、ライブの運営企業が公式サイトで一転、「痴漢の事実はなかった」という発表をおこなったことで、礼賛のファンをはじめ、音楽ファンからは強い批判の声が上がり、様々な憶測を呼んでいる。
実際に、ライブ会場で痴漢行為に遭ったという女性は少なくない。そうした被害者を増やさないために、ライブ運営に求められるものは何か。安心して推し活を楽しめる環境を考えるために、あらためて被害に遭った女性たちの声に耳を傾けてみたい。
被害者ならたまたま手が当たったか、痴漢行為かわかる
ハードロック、ラウドロック系のバンドのライブで、学生時代にたびたび痴漢に遭ったという女性・Aさん(20代)は、次のように当時の様子を振り返る。
「いわゆるラウドロック系のバンドが好きで、高校生の頃から大学時代によくライブやフェスに足を運んでいました。男性ファンが7割、女性ファンが3割というイメージで、ライブ中は激しいモッシュやダイブなどが起こるようなバンドだったんです。私も元気だったし、ライブで盛り上がりたいタイプだったので、モッシュに参加したり、ダイブの際に男性客の肩に乗せられて“肩車”される、ということもよくありました。
ライブ自体は楽しい思い出なのに、やっぱり痴漢されたことは何度もあって……。それを思い出すと今でも、怖いし、悔しいです。ライブでもみくちゃになる時、後ろから胸をグワッと鷲掴みにされたこともあれば、ダイブをするときに太ももから股に手を入れられたり、お尻を強く掴まれたりしたこともある。
こういう話をすると、男性は『ライブなんだから手が当たるのは当たり前だろ』『痴漢冤罪訴えるなら、ライブに来るな』と言うのですが、たまたま当たっている手と、わざと胸やお尻を揉んだり、掴んだりしている手の感触が違うことは、被害者なら絶対に分かります。同じ音楽を好きなファン同士が集まる空間で、こうしたマナー違反や犯罪行為が行われているのは許せません」(Aさん)
こうした経験から、徐々にバンドのライブに行く機会が減ったAさん。当時は、スタッフにも被害相談をすることができなかったという。
「やっぱり、バンドのファンってライブに通うにつれて知人も増えるし、友達も増えるんですよ。そんななかで『痴漢された』と言ったら、男のファン仲間からウザイやつだと思われるかもしれない、と不安で……。スタッフさんに相談したりしたら、変に揉め事になるかもしれないと思い、嫌な気持ちを誰にも相談できませんでした。今回、こうした事案がニュースになっているので、これを機に、ライブ運営会社やスタッフさん、アーティスト側がより強く痴漢被害を取り締まる体制を作ってほしいです」(同前)
結局、Aさんは社会人になってから、「ライブに行くのはやめて、完全に音源派になった」という。