高い成長力を誇り、株価も好調なBYD(Getty Images)
トヨタ自動車の株価が軟調だ。過去最高値は2024年3月27日に付けた3891円だが、約1年後となる3月31日(終値)は2616円まで下げており下落率は33%だ。
トヨタ自動車は売上高、純利益といった経営指標や、時価総額などで日本最大の企業である。日本を代表する企業の株価低迷は、日本の株式市場全体に暗い影を落としている。直近の株価低迷の原因は、米トランプ政権が打ち出した関税ショックと言われるが、はたしてそれだけだろうか。トヨタ自動車固有の問題、グローバルで進む大変革についていけない日本の自動車産業全体に係わる問題、あるいはもっと深刻で日本企業全体に共通する競争力の低下に係わる構造的な問題もあるかもしれない。
グローバルで競合他社の株価動向を調べると、BYDの上昇が目立つ。3月31日の終値は392.80香港ドルで、トヨタ自動車が過去最高値を記録した2024年3月27日の場中高値と比較すると、85%高い水準だ。過去最高値は3月20日の426.60香港ドルであり、足元では押し目を付けているが、依然として2月以降発生した強い上昇トレンドに乗って株価は推移している。
株価急騰の理由は明らかだ。業績が急拡大している。2024年12月期業績は29%増収、34%増益を達成。減益を記録した2021年12月期と比べると、売上高は3.6倍、純利益は13.2倍となっている。トヨタ自動車の業績も悪くない。2024年3月期は、グローバルでのハイブリッド車の販売好調、円安効果などで過去最高益(営業利益)を達成、2025年3月期も型式指定の認証不正などによる生産停滞の影響がある中、純利益は9%減程度に収まりそうだ。とはいえ、成長力という点ではBYDと比べ見劣りする。
中国という肥沃な市場で、高い競争力を発揮するBYD
2024年における中国の自動車販売台数は3143万6000台で4.5%増だが、新エネルギー自動車に限れば1286万6000台で35.5%増だ。新エネルギー自動車比率は12ポイント上昇し47.6%に達している。自動車販売台数は16年連続、新エネルギー自動車は10年連続で世界最大だが、加えて輸出が19.3%増の585万9000台まで拡大、こちらも世界最大となった。
中国本土市場では国産車比率が9.2ポイント高まり65.2%に上昇している。BYDの国内新エネルギー自動車の販売台数は385万5000台、国内シェアは1.3ポイント上昇し33.2%。国内自動車販売台数では第1位、新エネルギー自動車に限れば世界最大だ。
三電システム(電池、モーター、電子制御)を自社開発するなど、コアとなる技術力が高い。2025年に発表された「スーパーeプラットフォーム」では5分間の充電で400kmの航続距離を実現させるほどだ。製造面では、電池から半導体まで一貫して生産するといった垂直統合モデルを追求しており、AI、ビッグデータなどを活用したスマート製造を積極的に取り入れている。生産量拡大に伴う規模の経済効果も加わり、高いコスト競争力、安定した生産体制を築き上げている。
2023年に「油電同価」戦略を展開、「栄耀」モデルでは、同クラスのエンジン車よりも安い価格を設定、新エネルギー車の市場への浸透を加速させている。一方で、PHEV、純粋EVの2系統で、大衆車から高級車まで、多様な製品ラインナップを取り揃えており、市場の幅広いニーズに対応している。
中国政府による補助金、インフラ整備、排出規制などの新エネルギー車産業を重点的に支援する政策も追い風となっている。
つまり、政府の積極的な産業支援策を受けて発展の続く巨大市場を主要マーケットとしており、その肥沃な市場において、長い年月をかけて獲得した高い競争力を武器に急成長を遂げている。