森永卓郎氏はホンダと日産のこれからをどう見るか(写真はホンダの三部敏宏社長/EPA=時事)
1月28日に亡くなった経済アナリスト・森永卓郎さん(享年67)の週刊ポスト誌上の連載「読んではいけない」。1月27日発売号では、EV(電気自動車)の未来とホンダと日産の経営統合について考察してくれていた。日産凋落の原因はEV(電気自動車)への集中投資にあると看破した森永さんは、今回の経営統合に期待している点もあると明かしてくれていた。
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ホンダと日産が経営統合に向けた協議に入った。背景には日産の業績低迷があり、図式としてはホンダによる日産救済のための経営統合と言っていいだろう。
日産凋落の原因がEV(電気自動車)への集中投資にあることは自明だ。これからはEVの時代だという認識は日産だけではなく、欧米の自動車メーカーも同様だった。トヨタのHV(ハイブリッド車)に関する精緻な技術に、他国メーカーはとても追随できないという事情もあった。
ところが、である。EVが普及し始めると、化けの皮が剥がれた。意外にもポンコツだったのだ。そもそも補助金なしでは買えないほど価格が高い。長距離走行に難がある。環境に優しいと謳っていたが、廃棄処理を含めると環境対策にならない。電気を石油で作ると、そこから二酸化炭素が出る。そのほか冬場に充電しにくい、充電スポットが少ないなど、数多の問題が噴出し、需要の鈍化が顕著になった。
EVシフトを進めてきた海外メーカーも戦略の見直しを余儀なくされ、たとえばドイツのメルセデス・ベンツは「すべての新車を2030年までにEVにする」との方針を撤回。同様の目標を掲げたスウェーデンのボルボもこの方針を撤回した。私は遠からずEVは廃れると見ており、米国のテスラや中国のBYDにも未来はないと考えている。
日本政府はEV向け蓄電池の製造に3500億円の助成を発表するなどEVシフトを後押しするが、金の出し所を間違えているのではないか。