王道スペックの人気機種を生み出せるか
パチンコ人気低迷の背景について藤井氏は、「業界を牽引するようなヒット作が出ていない」ことを指摘する。
「パチスロについては、勝つために機種の内部システムなどをしっかりと研究するユーザーが多い傾向にあります。“勝てるかどうか”だけではなく、出玉システムの中におもしろさを見出し、パチスロを楽しむユーザーもたくさんいます。
一方のパチンコは、機種のシステムなどはあまり気にせず打つライトユーザーも多く、あまり詳しくなくても楽しめるのが魅力でもあります。だからこそ、パチンコの大ヒット機種が出てきたときは、『流行っているから』という理由でその機種で遊ぶユーザーも多かったんです。しかし、ここ数年はパチンコにおける大ヒット機種がなかなか生まれておらず、その状況がユーザー離れを加速させているとも言えるでしょう。ヒット機種がないからユーザーが離れ、ユーザーが離れたらさらにヒット機種が出てこない、という悪循環が生じているように思います」
パチスロでは、現在主流となっているAT機(アシストタイム機。押し順ナビ通りにリールを止めると小役が揃い、出玉を獲得できる機種)のほか、シンプルなノーマルタイプ(ボーナスのみで出玉を得る機種)や、目押しを成功させることで有利になる技術介入機など、多様なタイプの機種があり、それぞれにファンを獲得している。さらに、ノーマルタイプのみに搭載できる「ボーナストリガー」という新機能の近々登場する予定だ。
「パチンコでも近年はスペックの多様化が進んでいます。ラッキートリガーについても、今年7月からは『LT3.0プラス』と呼ばれる新バージョンが搭載された機種が登場する予定です。しかし、パチンコのスペックがパチスロほど多種多様かと言われれば、決してそうではない。そもそもパチンコは『玉を打って穴にいれる』という限定的なゲーム性であり、出玉以外の部分の楽しみを求めるユーザーが、パチンコを離れてパチスロに移行するのは、自然な流れだと言えるのかもしれません。
また、『海物語』シリーズのようなごくごくシンプルな機種が長く支持されていることを考えると、そもそもパチンコユーザーが多様なスペックを求めているかどうかも疑問です。限定的なゲーム性であることが変わらないなかで、スペックを多様化させることは正解なのか、ということを今一度見つめ直す必要もあるでしょう。そういう意味では、パチンコ人気復活のためには、シンプルな王道スペックの人気機種をいかに生み出していくかが重要なのかもしれません」(藤井氏)
人気低迷にあえぐパチンコが復活する時は来るのか、それともこのままパチスロと逆転してしまうのか。パチンコ離れしたユーザーが再び回帰することはあるのか、今後の動向に注目だ。