Gクラスの最高峰「メルセデスAMG G63ローンチエディション」。最高出力は585馬力とAMGらしくハイパフォーマンスを発揮する人気のモデル
芸能人をはじめとした多くのインフルエンサーが「欲しいクルマの1台」として名前を挙がることも多い「メルセデスのゲレンデ」、つまり「メルセデス・ベンツGクラス」。ドイツ語で「全地形車両」とか「オフローダー」を意味する「ゲレンデヴァーゲン」と名付けられたNATO(北大西洋条約機構)の軍用車を民間用にアレンジし、1979年にデビューしたGクラスは「不変の四角いボディ」と「進化を続けるメカニズム」を絶妙にバランスさせ、46年経過した現在でも、その人気は健在だ。昨年、3世代目のモデルがマイナーチェンジを施され、Gクラス史上初のBEV(バッテリーEV)モデルをラインナップに加え、ますます注目度が上がった。シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」、今回は、Gクラスの半世紀にわたる人気の秘密を自動車ライターの佐藤篤司氏が試乗してレポートする。
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「Gクラス」というモデル名は、もちろん「ゲレンデヴァーゲン」の頭文字から採ったもの。今もって多くの人たちが「メルセデスのゲレンデ」と呼ぶ理由は、ここにあります。それにしても半世紀あまり、基本的なフォルムを変えずに経過した車が、ここまでの支持率を維持するのは、やはり驚異的とも言えます。仮に同じような存在をあげるとすればBMWのMINIぐらいかもしれませんが、それでも現在のボディの大きさはオールドMINIから大きく変化しています。
一方、Gクラスは基本フォルムもサイズも大きく変わることなく現在に至っています。そこには年代を違わず、世界中のどこでもパーツ供給や修理が安定的に可能であることが求められた軍用車としての役割が影響しています。大幅なモデルチェンジはやりづらく、内外の大刷新もなかなかない。一方で、その役割を終えれば、古くさいデザインと中身を大幅に変更するか、あるいはモデル自体を廃盤とするのが一般的でしょう。本来ならばメルセデスも、2006年にデビューしたプレミアムSUVの「GLクラス」を世代交代モデルとして据え、Gクラスはお役御免と考えていたはず。
ところが、その時を迎えてもクラシカルな四角いボディのGクラス人気は衰えることなく、いえ、むしろその唯一無二のデザインとしてその人気は衰えることなく売れ続けたのです。当然ですが、ビジネスとして成立しているなら「辞める理由はなし」ということで現在に至っています。
ただし、たとえデザインはそのままであっても、延命策を取るならば、そのボディの中身は「時代に合わせた進化」が必須。その結果、2018年に登場した3世代目モデルは「フルモデルチェンジに匹敵するほどの変化」を実現してデビューしました。そして6年が経過した昨年1月、3世代目として初のマイナーチェンジを行い、さらなる進化を実現した現行モデルが登場しました。
世界中のセレブがワイルドな力強さとエレガンスの両立をこのラグジュアリーSUVの「Gクラス」に求めている。「AMG G63」の後ろ姿には都会的な香も感じ取ることができる
それだけでなく、Gクラスとして初となるBEV(バッテリーEV)モデル「G 580 with EQ Technology」もラインナップに加えました。時代に合わせた電動化への対応も果たしつつ、「唯一無二の基本デザインに変化はなし」という、最善の策を実現してくれたのです。これでディーゼルエンジンとガソリンエンジンの内燃機関モデルが2種、BEVが1種という選択肢が用意されたのです。当然ながら今回の新型Gクラスの中で最注目モデルといえば、BEVモデルとなります。すでにメルセデス・ベンツではBEVモデルをEQシリーズとしてコンパクトからラージまで充実させています。そこにGクラスが加えられたことでフルラインアップBEV化と言っていいほどの充実ぶりとなりました。
さっそく、今回の最新モデルの目玉であるBEVモデル「G580 with EQテクノロジー」を走らせてみます。
左の「AMG G63」と右はBEV(バッテリーEV)モデル「G 580 with EQ Technology」
Gクラス初のBEV(バッテリーEV)モデル「G 580 」は4モーターならではの制御によってその場でスピンする「Gターン」を可能にした