アイデアを生むときに心がけたい習慣とは(イメージ)
リクルート出身のコンサルタント・石川明氏(インキュベータ代表取締役)は、上手く言葉にできないモヤモヤした気持ち、整理しきれていないアイデアを、誰かと話しながら整理していく思考法「壁打ち」を新規事業の立ち上げ支援の現場で実践してきた。年間1000回以上「壁打ち」に携わってきた中で石川氏は、「同じ部署や同じ業界だけが相手ではアイデアは広がらない」と指摘する。むしろ部署や業種、さらにはライフスタイルまでまったく異なる「遠い人」との対話こそ、思わぬ発想の飛躍をもたらすという。石川明氏の著書『すごい壁打ち』(サンマーク出版)から再構成して紹介する。《全3回の第1回》
自分から距離が遠い人ほど思考を拡張させてくれる
そもそも自分の頭だけで考えていては埒が明かないからするのが、壁打ちです。それであれば、いっそのこと自分とは知識も経験も異なりそうな「距離が遠い人」を壁に選んでみましょう。
身近にいて話しやすく気の合う人とは、どうしても考え方や視点が似てきがちです。モヤモヤと考え始めた初期段階で、自分の頭の中を整理するために話を聞いてもらうには良いのですが、考えを「拡張」しようと思ったら、自分とは異なる人を選ばないと広げられません。
まず候補に挙げやすいのは、社内でも部署や職種、役職の異なる人です。営業部門の人は技術部門の人と、企画部門の人は管理部門の人と話してみる。それぞれの部署や職種には独自の視点や考え方があるので、それだけでも普段接している仲間とは違った気づきを得られることがあります。
大きな組織で働いている人なら、別の事業部の人を壁打ちの相手に選ぶのも良いでしょう。商品も、販売方法も、顧客も異なる事業部の人は、おのずと物事の捉え方が違います。その違いこそが、新しい発見に?がるのです。
私自身、クライアント企業でアイデアを拡張するためのワークショップを催すときは、できるだけ社内の多様なメンバーが集まるようにグループ分けを工夫します。それだけ、異なる視点を持つ人との対話には価値があるのです。
さらに視野を広げるなら、自分の会社以外の人と壁打ちをしてみるのも面白いでしょう。産学官=企業、大学、官公庁など、異なる属性の組織に所属する人との対話からは、思いもよらない視点が得られるかもしれません。
例えば、サービス業の経験しかない人には、製造業なら必須の「仕入れ」「在庫」「保守・メンテナンス」といった概念に馴染みが薄いですし、一方で製造業の経験しかない人は、サービス業において重要な「人材の確保・育成」「退職リスク」「クレーム対応」といった観点に抜け漏れが生じがちです。新規事業で今までと異なることに取り組むなら、お互いに視点を補完する必要があります。