創業家をめぐるトラブルが、企業価値そのものを揺るがす事態が相次いでいる。経営の危機に見舞われながら、創業家に手足を絡めとられて身動きできなくなっているのはスルガ銀行だ。
アパートローン向け融資に役員や行員が関与した不正が数多く見つかったばかりか、創業家のファミリー企業に不透明な融資を行なってきたことが第三者委員会の調査で明らかになると、スルガ銀行は創業以来5代にわたるオーナー一族である岡野家との決別を宣言した。
2018年に金融庁に提出した業務改善計画には、「創業家本位の企業風土を抜本的に改めることが改革の前提条件」と記されていた。
「『かぼちゃの馬車』というシェアハウスの問題、知りませんか?」
筆者(ジャーナリスト・山口義正)が取材先からスルガ銀行のアパートローン問題について、こんな話を耳にしたのは2017年11月のことだった。この問題が火を噴く直前のことだ。
「『かぼちゃの馬車』の経営危機がアパートローンに積極的に取り組んでいたスルガ銀行内部で問題になり、取締役会で同分野からの撤退が話し合われた。取締役からは撤退に反対する声もあったが、創業家以外で初の経営トップとなった米山明広社長の判断で撤退が決まった」と具体的な話も含んでいた。
だが当時、スルガ銀行の広報・IR担当に電話で確認すると「アパートローン事業から撤退するという事実はない」と全否定。創業家による強いグリップを感じさせた。