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退職金を「老人ホームの入居金にしよう」と預金することの重大リスク

老人ホームの入居資金を確保しておきたい気持ちはわかるが…

老人ホームの入居資金を確保しておきたい気持ちはわかるが…

 老後の虎の子資金である退職金で考えなくてはならないのが、運用するか、預金に回すのか、預金するとして「いつまで貯めたままにしておくか」だ。定年退職後、妻と都心のマンションで暮らす長嶺さん(63・仮名)はこういう。

「1000万円の退職金のうち500万円は、妻と相談して“老人ホームの費用にとっておこう”と、普段使うのと別の定期口座に移してある。それなりの施設に入るにはまとまったお金が必要ですからね」

 老人ホームの検索サイト「みんなの介護」によると、民間の介護付き有料老人ホームの入居一時金の平均額は355万1000円。長嶺さんの蓄えがあればたいていの費用を賄える。

 しかし、ファイナンシャルプランナーの森田悦子氏は「退職金を『老人ホームの入居資金』と決め込んでしまうやり方はあまりお勧めしません」と話す。

「老人ホームに入居するのは75歳を超えてからが大半です。定年退職してから約10年も先のことで、それまでお金を有効活用できる機会は数多くある」

 たとえば自宅のリフォームは人によっては複数のメリットがある。“老人ホーム入居のために”と、まとまった金額を別口座にして触らないでいると、リフォーム費用が捻出できないことにもなりかねない。

「その結果、段差の多い自宅に70歳を超えても住み続けることになり、転倒して負ったケガなどで、医療費がかさむリスクも考えられる。柔軟な発想をせずに“10年間、絶対にこのお金には触らない”と決めてしまうことも、またリスクだと認識したほうがいい。

 老人ホーム入居費用には、自宅を売却して得た資金を充てられるケースもある。退職金単体で使途を考えるのではなく、保有資産全体をどう生かすかを考えてマネープランを組み立てていったほうがよいでしょう」(同前)

※週刊ポスト2019年6月21日号

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